@s_ota92
- 2026年2月13日
金閣寺三島由紀夫p10 「私には、同級の少年たちの、少年期特有の残酷な笑いが、光のはじける葉叢のように、燦然として見えるのである。」 p17 「他人はみんな証人だ。それなのに、他人がいなければ、恥というものは生れて来ない。」 p33 「しかし私の心があれほど美しさを予期したものから裏切られた苦痛は、ほかのあらゆる反省を奪ってしまった。」 - 2026年1月28日
伊豆の踊子川端康成温泉宿 p48 「彼女等は獣のように、白い裸で這い廻っていた。」 p50 「その濡れた黒々しさを、ほかの彼女等は日頃から、二人の生れつきの色情の匂いと感じる。」 p53 「葉のつやつやしい青の山葵を、背負い枠一ぱいに負って、山から裸馬を走らせてくる彼女は、緑の朝風だった。」 p63 「真白な蛞蝓のように、しとしと濡れた肌───骨というものがどこにも感じられない、一点のしみもない柔かな円さだ。」 p73 「お時は目の窪んだ、鈍い百姓だが、湯殿では色白の肌が別の姿のように美しい。」 p84 「祭を待つ曲馬娘のような生きしさで、しかし一方、彼女の癖の自分の葬式の幻を描いている。」 p95 「まことに風の便りである。」 p97 「こぼれた月の光に足をさらしながら、」 p101 「お清は無理に起き上って、自殺の覚悟をした。」 抒情歌 p106 「それほどまでに今も私はあなたを愛しています。」 p108 「けれども、屋根の上に温室のある部屋で、四五十人もの女が集まり、いち時に思い出の競争をいたしましたなら、部屋から立ちのぼるはげしい悪臭のために、温室の花はみんな枯れてしまうでありましょう。」 p111 「私の天使の翼は折れてしまったのでありました。」 p126 「あなたという恋人のある時、私の涙は夜の眠りに入る前に、私の頬を流れたのでありました。ところが、あなたという恋人を失った当座、私の涙は朝の目覚めに私の頬を流れていたのでありました。」 p133 「子供の心に宿っていた天使が私を見棄てたのでありましょうか。」 p137 「このように愛し合った私達でありながら、そうして二人の恋を予知した私でありながら、なぜ私はあなたと綾子さんとの結婚や、またあなたの死をさとることが出来なかったのでありましょう。 なぜあなたの魂はあなたの死を私に知らせて下さらなかったのでありましょう。」 p140 「けれども今日この頃の私は、霊の国からあなたの愛のあかしを聞きましたり、冥土や来世であなたの恋人となりますより、あなたも私もが紅梅か夾竹桃の花となりまして、花粉をはこぶ胡蝶に結婚させてもらうことが、遥かに美しいと思われます。」 禽獣 p144 「小鳥の鳴声に、彼の白昼夢は破れた。」 p151 「そして籠を枕もとに置いて、彼も眠った。」 p160 「彼女の肉体の野蛮な頽廃に惹かれた。」 p161 「このボストン・テリアのように、千花子は子供に無心でいられなかったのである。」 p164 「舌ざわりは哀憐の涙を催すほどであった。」 p166 「初恋人に似た女を愛する。」 - 2026年1月23日
雪国川端康成p5 「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。」 p7 「悲しいほど美しい声であった。高い響きのまま夜の雪から木魂して来そうだった。」 p28 「蝶はもつれ合いながら、やがて国境の山より高く、黄色が白くなってゆくにつれて遥かだった。」 p54 「澄み上がって悲しいほど美しい声だった。どこかから木魂が返って来そうであった。」 p64 「箪笥の中を見れば、その女の性質が分るって言うよ。」 p69 「敬虔の念に打たれた、悔恨の思いに洗われた。」 p81 「葉子の悲しいほど美しい声は、どこか雪の山から今にも木魂して来そうに、島村の耳に残っていた。」 p105 「『駒ちゃん。』と悲しいほど澄み通る声で襖の陰から呼ぶ、あの葉子ではなかった。」 p106 「手拭をかぶっているので島村が見えないのか、葉子は山袴の膝頭を開いて小豆を叩きながら、あの悲しいほど澄み通って木魂しそうな声で歌っていた。」 p116 「聞こえもせぬ遠い船の人を呼ぶような、悲しいほど美しい声であった。」 p117 「純潔な愛情の木魂が返って来そうだった。」 p124 「駒子の愛情は彼に向けられたものであるにも関わらず、それを美しい徒労であるかのように思う彼自身の虚しさがあって、けれでも反ってそれにつれて、駒子の生きようとしている命が裸の肌のように触れて来もするのだった。」 p127 「それでいいのよ。ほんとうに人を好きになれるのは、もう女だけなんですから。」 p135 「その笑い声も悲しいほど高く澄んでいるので、白痴じみては聞こえなかった。しかし島村の心の殻を空しく叩いて消えてゆく。」 p149 「薄く雪をつけた杉林は、その杉の一つ一つがくっきりと目立って、鋭く点を指しながら地の雪に立った。」 p153 「駒子が虚しい壁に突きあたる木霊に似た音を、島村は自分の胸の底に雪が降りつむように聞いた。」 p163 「恐ろしい艶めかしさだ。」 p173 「駒子は自分の犠牲か刑罰かを抱いているように見えた。」 - 2026年1月22日
汝、星のごとく凪良ゆうp9 「───夕星やな。」 p27 「それが波打ち際に書いた字のようにあっけなくさらわれていく。」 p41 「お互い決壊まであと少しというときに、ぱんっと手を叩く音が響いた。」 p45 「日によって、季節によって荒れ狂う。世界に平穏はない。人生に嵐は避けられないと教えるように。」 p61 「悲しい話を悲しいままで終わらせるということは、昔の俺をその物語に永遠に閉じ込めるということだ。」 p108 「調子のいいときほど自虐して身を固める。」 p115 「きみのそれは優しさじゃない。弱さよ。」 p121 「誰かに幸せにしてもらおうなんて思うから駄目になる。自分で勝手に幸せになれ。自分は自分を裏切らない。」 p143 「一瞬心が羽ばたきかけ、けれどすぐに折りたたまれていく。」 p177 「わたしはそれで髪をくくってみたけれど、櫂がなんにも気づかないので笑ってしまった。」 p178 「それは思い出の味で、思い出の価値は人によって異なる。」 p185 「いつだって核心は言葉の届かない深い場所にある。」 p185 「収穫されなかった果実がゆっくりと腐っていくような関係だ。」 p192 「櫂は他の人にはこんな失礼なことはしないだろう。どうしてわたしなら許されると思うんだろうか。」 p193 「生きて、考えて、時間の経過と共に変化していき、傷ついたり喜んだりするひとりの人間で、あなたの恋人だ。」 p221 「自分たちの弱さを他人に背負わせている。」 p225 「それを枷と捉えるか、自分を奮い立たせる原動力と捉えるか。」 p268 「薄皮一枚の下に、弱くて泣きたい自分を隠してもいいじゃないか。」 p285 「強くなると決めたはずなのに薄皮一枚めくれば弱い自分が隠れている。」 p296 「ええ、割り切れません。ぼくたちはそういう悩み深い生き物だからこそ、悩みのすべてを切り捨てられる最後の砦としての正論が必要なんです。」 p299 「でも人は自分というフィルターを通してしか物事を見られない。」 p310 「あんたの中心はあんたやで。どんだけ惚れても自分の城は明け渡したらあかん。自分で自分のことつまらんとかも言うな。あんたの価値はあんたが決めるんや。」 p336 「籍を入れなくても手術の同意書を書かせてほしい。」 p342 「思い出す間もないほど彼女は北原先生の中に在る、ということだ。」 p344 「わたしにとって愛は優しい形をしていない。どうか元気でいて、幸せでいて、わたし以外を愛さないで、わたしを忘れないで。愛と呪いと祈りは似ている。」 p353 「最高で最低な気持ちの中で終われたら最高だ。」 p369 「けれど正しさだけでは救えないものがある。」 p371 「なにかを欲するなら、失う覚悟も必要だ。けれどまた別のなにかを得られることもある。」 p391 「何度でも言います。誰がなんと言おうと、ぼくたちは自らを生きる権利があるんです。ぼくのいうことはおかしいですか。身勝手ですか。でもそれは誰と比べておかしいんでしょう。その誰かが正しいという証明は誰がしてくれるんでしょう。」 p395 「それでも、わたしは、明日死ぬかもしれない男に会いにいきたい。」 p395 「わたしは愛する男のために人生を誤りたい。」 p419 「───ああ、夕星。」 - 2026年1月21日
こころ夏目漱石p15 「寧ろそれとは反対で、不安に揺かされる度に、もっと前へ進みたくなった。」 p16 「傷ましい先生は、自分に近づこうとする人間に、近づく程の価値のないものだから止せという警告を与えたのである。他の懐かしみに応じない先生は、他を軽蔑する前に、まず自分を軽蔑していたものと見える。」 p22 「人間を愛し得る人、愛せずにはいられない人、それでいて自分の懐に入ろうとするものを、手を広げて抱き締める事の出来ない人、───これが先生であった。」 p34 「私は世の中で女というものをたった一人しか知らない。妻以外の女は殆ど女として私に訴えないのです。妻の方でも、私を天下にただ一人しかいない男と思ってくれています。そういう意味から云って、私達は最も幸福に生れた人間の一対であるべき筈です。」 p46 「私は私自身さえ信用していないのです。つまり自分で自分を信用できないから、人も信用できないようになっているのです。自分を呪うより外に仕方がないのです。」 p47 「かつてはその人の膝の前に跪ずいたという記憶が、今度はその人の頭に上に足を載させようとするのです。私は未来の侮辱を受けないために、今の尊敬を斥ぞけたいと思うのです。私は今より一層淋しい未来の私を我慢する代りに、淋しい今の私を我慢したいのです。自由と独立と己れとに充ちた現代に生れた我々は、その犠牲としてみんなこの淋しみを味わわなくてはならないでしょう。」 p55 「そりゃ私から見れば分かっています。(先生はそう思っていないかも知れませんが)。先生は私を離れれば不幸になるだけです。或は生きていられないかも知れませんよ。そういうと、己惚になるようですが、私は今先生を人間として出来るだけ幸福にしているんだと信じていますわ。どんな人があっても私程先生を幸福にできるものはないとまで思いこんでいますわ。それだからこそこうして落ち付いていられるんです。」 p79 「梅が咲くにつけて、寒い風は段々向を南へ更えて行った。」 p92 「君の気分だって、私の返事一つですぐ変わるじゃないか。」 p168 「このまま人間の中に取り残されたミイラの様に存在していこうか、それとも……その時分の私は『それとも』という言葉を心のうちで繰り返すたびにぞっとしました。馳足で絶壁の橋まで来て、急に底の見えない谷を覗き込んだ人のように。」 p170 「私はこんな矛盾な人間なのです。或は私の脳髄よりも、私の過去が私を圧迫する結果こんな矛盾な人間に私を変化させるのかも知れません。」 p171 「だから、一旦約束した以上、それを果たさないのは、大変厭な心持ちです。」 p172 「私は何千万といる日本人のうちで、ただ貴方だけに、私の過去を物語りたいのです。あなたは真面目だから。」 p184 「香をかぎ得るのは、香を焚き出した瞬間に限るが如く、酒を味わうのは、酒を飲み始めた刹那にあるが如く、恋の衝動にもこういう際どい一点が、時間の上に存在しているとしか思われないのです。」 p200 「私は金に対して人類を疑ったけれども、愛に対しては、まだ人類を疑わなかったのです。」 p206 「私の理屈はその人の前に全く用を為さない程動きませんでした。」 p253 「精神的に向上心のないものは馬鹿だと云って、何だか私をさも軽薄もののように遣り込めるのです。」 p256 「私は心の中でひそかに彼に対する凱歌を奏しました。」 p261 「私は思い切ってどろどろの中へ片足踏み込みました。そうして比較的通り易い所を空けて、御嬢さんを渡して遣りました。」 p262 「これは余事ですが、こういう嫉妬は愛の半面じゃないでしょうか。私は結婚してから、この感情がだんだん薄らいで行くのを自覚しました。その代わり愛情の方も決して元のように猛烈ではないのです。」 p264 「つまり私は極めて高尚な愛の理論家だったのです。同時に尤も迂遠な愛の実際家だったのです。」 p283 「『馬鹿だ』とやがてKは答えました。『僕は馬鹿だ』」 p300 「奥さんの云うところを綜合して考えて見ると、Kはこの最後の打撃を、最も落附いた驚をもって迎えたらしいのです。」 p309 「私には綺麗な花を罪もないのに妄りに鞭うつと同じ様な不快がそのうちに籠っていたのです。」 p311 「けれども私の幸福には黒い影が附いていました。」 p314 「純白なものに一雫の印気でも容赦なく振り掛けるのは、私にとって大変な苦痛であったのだと解釈してください。」 p317 「私は寂寞でした。」 p326 「渡辺崋山は邯鄲という画を描くために、死期を一週間繰り延べたという話を先達て聞きました。」 - 2026年1月16日
思い出トランプ向田邦子かわうそ p19 「一日中遊んでよろしいといわれ、ボールをあてがわれても、たったひとりでは、ただのゴムの球体に過ぎない。」 p22 「かわうそは、いたずら好きである。」 だらだら坂 p32 「この坂は、庄治の四季であった。」 はめ殺し窓 p47 「家の貌はそのまま江口のくたびれた貌に違いなかった。」 p55 「美貌の妻を自慢しながら、一生嫉妬に苦しんだ父親の二の舞はしたくなかった。」 マンハッタン p97 「無気力気質同士、ゆっくりゆこう。」 犬小屋 p110 「こういうとき、カッちゃんの目は笑っている癖に泣きべそをかいているようにみえた。」 大根の月 p137 「そのせいか、大人になってからも、大根を切っていて切り損ないが出来ると、ひとりでに手が動いて食べてしまう癖がついた。」 りんごの皮 p155 「気の進まないところへ出掛ける時は、時刻表通りに、したり顔でやってくる乗り物まで自分を嬲っているように思えて、時子は腹が立っていた。」 酸っぱい家族 p171 「捨てるということが、こんなにむつかしいとは知らなかった。」 耳 p188 「家族の居ない家は、他人の家みたいだ。」 p196 「妻に迎えたひとは、ごく軽くだが片足を引く。」 花の名前 p212 「教えた甲斐があったわ。」 p217 「女の物差は二十五年たっても変わらないが、男の目盛りは大きくなる。」 ダウト p228 「通夜にしろ結婚式にしろ、人の節目のセレモニーには、大なり小なり芝居っ気がともなうものである。」 p231 「自分のなかに、小さな黒い芽があることに塩沢は気がついていた。」 p236 「ダウト───と何度声をかけても、カードを裏返してくれなければ、計りようがない。」 - 2026年1月15日
花を見るように君を見るナ・テジュ,黒河星子p12「僕は君を」 p16「愛にこたえる」 p43「君もそうか」 p44「花・1」 p53「この秋に」 p74「便り」 p79「墓碑銘」 p87「祈り」 p100「草花・3」 p114「木に話しかける」 p126「12月」 - 2026年1月14日
人間失格太宰治p5 「私は、その男の写真を三葉、見たことがある。」 p9 「恥の多い生涯を送ってきました。」 p12 「つまり自分には、人間の営みが未だに何もわかっていない、という事になりそうです。」 p17 「何が欲しいと聞かれると、とたんに、何も欲しくなくなるのでした。」 p64 「弱虫は、幸福にさえおそれるものです。」 p88 「誰とも、附き合いがない。どこへも、訪ねて行けない。」 p101 「けれども、その時以来、自分は、(世間とは個人じゃないか)という、思想めいたものを持つようになったのです。」 p103 「して翌日も同じことを繰返して、昨日に異らぬ慣例に従えばよい。即ち荒っぽい大きな歓楽を避けてさえいれば、自然また大きな悲哀もやってこないのだ。ゆくて塞ぐ邪魔な石を蟾蜍は廻って通る。」 p116 「結婚しよう、どんな大きな悲哀がそのために後からやって来てもよい、荒っぽいほどの歓喜を、生涯にいちどでいい。」 p128 「自分の若白髪は、その夜からはじまり、いよいよ、すべてに自信を失い、いよいよ、ひとを底知れず疑い、この世の営みに対する一切の期待、よろこび、共鳴などから永遠にはなれるようになりました。」 p147 「人間、失格。」 p149 「ただ、一さいは過ぎて行きます。」 - 2026年1月13日
流浪の月凪良ゆうp17 「ご飯は力強くふくらむものだし、アイスは頼りなく蕩ける。」 p42 「あの日、私の人生は荒波へと投げ出され、気を抜くと溺れそうで、おちおち熟睡などできやしなかった。」 p54 「文自身がちゃんとしていることと、他の人がちゃんとしていないことは、文の中では別のことなのだ。───人それぞれ、みんな違っているなんて当たり前のことなのにな。」 p69 「文は楽しいことなんにも知らないね。更紗は知っていて当然のことを知らないな。」 p70 「甘さとしょっぱさのように、怠惰と勤勉は交互に行うのがよい。」 p120 「集めてもこぼれ落ちていく。だから手に入れない。持たずにいれば捨てずにすむ。そのほうが楽だと。」 p144 「記憶は共有する相手がいてこそ強化される。」 p156 「でも多分、事実なんてない。出来事にはそれぞれの解釈があるだけだ。」 p194 「ああ、そうだ。世界はどうしようもないことであふれているから、理不尽さに憤っても消耗するだけだ。」 p197 「哀願は暴力とは別の場所を殴りつけてくる。」
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