
とろん
@toron0503
2026年3月13日
平場の月
朝倉かすみ
読み終わった
ネタバレあり
ヒロインが亡くなる、という設定のストーリーは多々あるけれど、これはその弱っていくさまやお金のことがリアルに書かれているところが良かった。しかも「大腸がん」なので、どうしても避けて通れない排泄の問題を描いていて、死や病をきれいなものとして糊塗しないところもすごいな、と思う。
冒頭で既に須藤の死とその少し前に別れたことが示唆されているので、たぶんどこかで仲違いしてしまうのだろうな…と展開が予測できてしまった。ミステリなどではないので、展開が予測できても問題はないのだけれど。
あと、三人称ではあるけれど、わりと癖のある文体だと思う。一人称よりの三人称というか、感情をのせた三人称というか…太宰の『走れメロス』の三人称を髣髴とさせた。苦手というほどではなかったが、どちらの会話かわからなくなる部分がある。独特のテンポ、ともいえるのかもしれない。
自分も平場の人間ではあるけれど、青砥も須藤もどこか「遠さ」を感じた。
彼らの感情の機微だけでなく、地元に帰ってまた10代のコミュニティに戻って生活をしている、自分とは別種のしぶとさがまぶしいからかもしれない。
印象深かったのは、大腸がんが発覚してからの須藤がアブラナ科の野菜ばかり食べている描写。
50代で、ひとり暮らしで、自分のせいともいえる出来事でお金はほとんどないなか病が発覚して…という状況でキャベツをひたすら食べるシーンは、強さよりやはり悲しさが際立つ。
