むくげ "椿の海の記" 2026年3月17日

椿の海の記
椿の海の記
石牟礼道子
生活を書く、ということを感じさせられる作品だった。この作品には盛り上がりやどんでん返しというものは希薄で、ありのままを一文一文に込めて丁寧に描くということが徹底されている。 また、主人公のみちこ(みっちん)の目を通して、みちこの視点から世界を映し出しているように感じた。特に前半部分は顕著で、みちこ自身のことではなく世界の描写がとにかく続く。四歳のみちこと世界がまだ未分化の状態だからだろうか。 一方、後半部分は前半部分と比べてみちこのパーソナリティに焦点が当てられている。時間を経るにつれて、大人が自他の境界を持つように、世界から切り離されつつある状況を示しているようにも考えられる。 『苦海浄土』をまだ読んでいなかったのが少し悔やまれる。
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