
Suzuki
@finto__
2025年3月15日

ベル・ジャー
シルヴィア・プラス,
小澤身和子
読み終わった
★★★★★
「どの枝の先からも、丸々とした紫色のイチジクみたいに素晴らしい未来が、手招きしたりウィンクしたりしている。あるイチジクは夫と幸せな家庭、それに子どもたち。別のイチジクは有名な詩人で、また別のイチジクは優秀な教授。さらに別のイチジクは人もうらやむ編集者イー・ジーで、そのまた別のイチジクはヨーロッパとアフリカと南米、その先のイチジクはコンスタンチンやソクラテスやアッティラなど珍しい名前と変わった職業を持つ恋人たち。また別のイチジクはオリンピックの女子漕艇の金メダリストで、それらの後ろにも上にも、数えきれないほどイチジクがたわわに実っていた。
イチジクの木の幹の分かれ目に座り、飢え死にしそうになっている自分の姿が見えた───どのイチジクを選んだらいいか決められないのだ。あれもこれも欲しくて、ひとつを選んでしまったら、残りすべてを失うと思っている。そうして決められずにいたら、イチジクにしわが寄って黒くなり、ひとつ、またひとつと、足元の地面に落ちていった。」p118




