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Suzuki
Suzuki
@finto__
記録:2025年3月〜
  • 2025年3月10日
    月のうた
    月のうた
    ★★★★☆ 「月面のようなえくぼだ夜の駅好きって言ったら届くだろうか」初谷むい
  • 2025年3月9日
    ギリシャ語の時間
    ギリシャ語の時間
    ★★★★☆ 「君が僕を初めて抱きしめたとき、あの身振りに、若い、痛切な、隠しておけない欲望を感じたとき、鳥肌が立つほどはっきり僕は悟ったのだと思う。人間の体は悲しいものだということ。へこんだところ、やわらかいところ、傷つきやすいところでいっぱいな人間の体は。腕は。脇の下は。胸は。股は。誰かを抱きしめるために、抱きしめたいと思うように生まれついている、あの、体というものは。 あの季節が終わる前に君を、一度でいいから、壊れるぐらいに、真正面から抱きしめなくてはいけなかったのに。 それは決して僕を傷つけはしなかったろうに。 僕は倒れも、死にもしなかったろうに。」p145-46
  • 2025年3月9日
    ダンス
    ダンス
    ★☆☆☆☆ 「考えなくてよいこと、気にしなくてよいこと、しなくてよいこと、そういうことが分からない私は、太郎をどんどん偏屈にさせていった。社会と自分とのバランスを器用に取ることができる太郎が、いつも頼もしかったのに、理解できるつもりでいたのに、私は空洞のようになっていった。私の空洞は、太郎を息苦しくさせた。たったふたりきりの関係の中でも、私は「馴染む」ことができなかったのかもしれなかった。 そういう記憶のもっと奥に、あったんだろうか、怖いこと、さみしいこと、うれしいこと、味わいたいと思うような瞬間、忘れたくないと思える何か。 思い出せなかった。思い出せないのに、生まれ出た言葉はもうそこにあって、下村さんがそう言うなら、きっとそうだったんだと追い風のように胸に届く。」p115
  • 2025年3月8日
    パッキパキ北京
    ★★★★☆ 「例えばすごく努力して何かの分野で一流で、人気もあって金もある、性格も良いしモテる男が「いや、僕なんかまだまだ。僕よりもっとすごい人なんて、この世にたくさんいますから」と謙遜じゃなく心から思ってて、日々努力して研鑽してるとしたら、残念ながらそいつは完敗している。「私って負けず嫌いなんです」とか言いながら食事も快楽も節制して誰よりも美しくて、ろくに休まず社会で活躍してる人間も、かける言葉も無いほど痛ましい人生の敗者だ。素の自分を、いつまでたっても認めてあげてないからだ。反対に自他共にどうやっても認めざるを得ないほど社会の底辺に属してて、毎日イヤなことや辛いことがひっきりなしに起こってても、そいつがニヤニヤしながら「おれは敵などいない。全知全能の神だ」と心から言いきれるなら、こいつはもう、完全に勝利している、一番偉く、一番進化した、一番コスパの良い人類だ。「私はそこそこでいいの、そこそこの幸せでいいから」とか言って小確幸を求める中途半端な小市民を大きく突き放し、ぶっちぎりの第一位。」p122
  • 2025年3月8日
    スメラミシング
    ★★★★★ 「『世界には理由がある。それこそがマスタープラン』スメラミシングがよく使う常套句のようなものだったが、その言葉が多くの人々を惹きつけているのではないかと私は考えていた。地球が誕生したのも人類が誕生したのも偶然だ。何億年、何十億年という時間をかけて、さまざまな偶然の連鎖の果てに、私たち人類は存在している。だが、私たちはその事実に耐えられない。だからこそ神を創造した。自分が生きていることは必然なのだと考えようとした。私たちは幸福を求めているのではなく、理由を求めている。真実を求めているのではなく、理不尽で暗く、生きる価値のない現実を受け入れるための物語を求めている。昔からずっとそうだった。」(「スメラミシング」p146-47)
  • 2025年3月8日
    私の小説
    私の小説
    ★★★★★ 「私はだれか他者に正直になるということができない人間だ。つまらない私の異常さをおもしろくすることはできない。私のつまらないインモラル、私のつまらない反社会性、私のつまらない性癖を。そもそも私たちは創作しているというその時点で加害的で、被害者の顔をすることはむずかしく、フィクションの登場人物にそうさせるように、自分やだれかの人生をおもしろいとおもい、そうなるように寄せて考えること自体危うい、ますます危ういものとなってゆく。人間という生き物の根元的な暴力として「おもしろい」とはなにか?ということがつねに問われているのは、どのような時代においても変わらずまだ見逃されているにすぎない。加害的立場におりながら、加害側のなかで被害者の顔をするためになんだってする、それが私の考える父権的ヒロイズムだ。たとえば我に大義ありと他者の生を矮小化して奪う、身体の芯までフィクションにひたされフィクションにふやけたような私のする、土下座のごときパフォーマティブで切腹めいた自傷的創作がそれである。」(「私の推敲」p87)
  • 2025年3月8日
    ここで唐揚げ弁当を食べないでください
    ★★★★☆ 「心を痛めるのには小さ過ぎる変化を、どうってことないと、どうして私は見逃せないのだろう。見逃せる日は当たり前のように見逃せるのだから、見逃せない日がたんに目立っているだけかもしれないけれど。 くるしくなるほど入れ込めるものがあってよかった。たいせつなのは、なにかを好きになることだもの。ならば良かった、ならば良かったんだ、と心に説明しているのは私の中の誰だろう。」p101
  • 2025年3月7日
    メメントラブドール
    メメントラブドール
    ★★★★☆ 「いつだって自分を含めた誰かを無鉄砲に煽って生きている。そうしないと立っていられない場所にいるのだから仕方ない、という開き直りはどれくらいの正当性をもって響くのだろう。」p99
  • 2025年3月7日
    無職、川、ブックオフ
    ★★★☆☆ 「働いて失ったもの。ない。 働いて得たもの。ない。 何も変わっていない。たぶん。そう願っている。」p88
  • 2025年3月7日
    コミック・ヘブンへようこそ
    コミック・ヘブンへようこそ
    ★★★☆☆ 「ミンヒョンは耳まで真っ赤にしながら、いちいち全部説明した。この人は、こういうことで頬を染める人なんだな。お酒を飲んでる途中でお互いの手が触れた時なんかじゃなくて、子ども向けの戦隊ヒーローについて説明する時、ほてっちゃう顔なんだ。 不意に、『へえー』と思った。へえー、こういうので顔が赤くなるんだ。へえー。 そういうことをきっかけに、人をかわいいと思っちゃいけない気がするんだけど。」(「恐竜マニア期」p138)
  • 2025年3月7日
    太陽帆船
    太陽帆船
    ★★★☆☆ 「さんざんが雨のように降り頻る さんざんさんざん 許されてきた」p48
  • 2025年3月7日
    いつか月夜
    いつか月夜
    ★★★☆☆ 「そんなふうにぼやく夏生は、けれども同じ口で、妻や子を大事に思っている、と言う。なんだかんだ言ってあいつらがいて幸せだと。冬至の気楽な生活がうらやましいよと言い、でもいつかは身を固めるんだよなと念を押す。心配と軽侮と優越感と蔑みがいれかわりたちかわり、夏生の頭に浮かぶ。なんて忙しないのだろうと呆れながら、同時に奇妙な親しみをも覚える。 兄もまた、必死に迷いながら生きているのだ。 「でも兄ちゃんは、幸せやろ?今」 「まあ、な」 質成は弟としてのつとめを正しく果たした気分になり、兄の了承を得ずにまたウニを注文した。」p158
  • 2025年3月7日
    セルフィの死
    セルフィの死
    ★★★★☆ 「承認されたくて承認されたくていつも死ぬほど震えているのに、目の前の人間からの関心は煩わしいとしか思えない。 歯の裏にまだ映えの残骸がこびり付いている気がしてグラスを手にした。どうして自分はこんな人間なのだろうともう数え切れないほど繰り返した自問を、発泡しなくなったぬるい液体でとりあえず誤魔化した。」p148
  • 2025年3月7日
    ブロッコリー・レボリューション
    ★★★★☆ 「この光は、これからさらに夜が進んでいけば、もっともっと殖えて、盛んになっていくものなのだ。幹線道路、高速道路をヘッドライトの黄色の光とテールランプの赤の光とが、隣り合って反対の方向に流れている、その様子をみているだけでも、東京が生きていて、活動している、血液が循環している、呼吸だって行われている、横隔膜が運動している、そういうことは明らかなはずだった。それでもありさは、まだこんなふうに勘ぐっているのだった、確かに上空からみるかぎり、東京はなにも変わってない、けれどもそれはみせかけにすぎないのだ、これは全部、抜け殻なのだ、誰もいない部屋やオフィスを、煌々と蛍光灯が照らしていて、車を運転しているのはみんなコンピュータプログラムなのだ、そうでなければ、車を運転しているのは、人間ではなく、やっぱりゾンビなのだ。」(「ブレックファスト」p70)
  • 2025年3月7日
    孤独への道は愛で敷き詰められている
    ★★☆☆☆ 「そんなふうに、私は昔から、早とちりで思い込みの激しいダメな人間だった。人が普通にできることができないし、そもそもどうやればいいのかも分からない。その場の思いつきと勢いで行動してはみるものの、根気も根性もないから長続きせず、軸がないままその時々の感情に流されてきた。 自分のことすら持て余すのに、人に何かできるわけがなかった。それなのに変に買いかぶってくる人がいたから、余計な失敗と恥を重ねて生きて来た。そうしてますます生きる自信を失くした。」p119
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