久保みのり|書店よむにわ "ロイヤルホストで夜まで語りた..." 2026年3月19日

ロイヤルホストで夜まで語りたい
ロイヤルホストで夜まで語りたい
ブレイディみかこ,
上坂あゆ美,
似鳥鶏,
古賀及子,
宇垣美里,
宮島未奈,
平野紗季子,
朝井リョウ,
朝井リョウほか,
朝日新聞出版,
朝比奈秋,
村瀬秀信,
柚木麻子,
温又柔,
稲田俊輔,
織守きょうや,
能町みね子,
青木さやか,
高橋ユキ
私はあまり、食にまつわるエッセイに手が伸びない方だと思う。理由は簡単だ。読むとお腹が空くから。あと、常に何か悩んだり、解を求めたりしていて、それらは食欲とは関係ないからだ。    でも、食べるのも飲むのも大好き。で、何かこう、特定の対象(食関係)に興味関心がぶわーっと湧き上がる瞬間があり。積ん読はしている。手が伸びるタイミングは少ないが、やっぱり読みたい。    それで、ある日突然そのタイミングがやってきた。    光村図書『ベスト・エッセイ2025』で、最果タヒさんのエッセイを読んだから。    「誰にでも、コメダのシロノワールとか、スタバのフラペチーノとか、ロイヤルホストのチョコパフェだとか、ケンタッキーのビスケットだとか、伝わるものがあって、それは食におけるこの地上の「語彙」なのかもしれない。同じ言語を話せるというのは同じ語彙を共有しているということ。そこには少しずつズレもあるし、持っていない語彙もお互いにあったりするけど、でもそれらで会話ができていく。そうやって、自分と相手の人生が全く異なるという、どうしようもない現実においても、互いを見ることを可能にするのだろう。」(最果タヒ「チェーン店が描く地図」(「ちくま」2025年2月号)より)    読んで、ふと思い出した。『ロイヤルホストで夜まで語りたい』を積んでいると。    私は、ロイヤルホストに行ったことがない。……というのは嘘で。ロイヤルホストを知らないのが恥ずかしくて、大人になってから一度だけ行った。それで、ロイヤルホストの良さがわからなくて余計に寂しくなった。    どうしようもない気持ちを抱えたまま、気づいたら『ロイヤルホストで夜まで語りたい』を買っていた。諦めが悪いというか。仲間に入れてよって気持ちで。でもやっぱり、同じ熱さでロイヤルホストを語れない劣等感に負け、積ん読行きとなった。    タヒさんのことばを借りれば「共通言語がない」と、その時の私が判断したのだろう。そのことをタヒさんの文章で明確に意識できたとき、これは一時的な疎外感かもと思った。それで、いまこそ読むぞ、と手が出た。    で、読んでみたら。    「おまえのそれはメシではない。ロイホなのだ。だがしかし、受け皿たる者の感性がロイホではない限り、ロイホはロイホにならない。ロイホがロイホであるためには、ロイホらしくロイホをまっとうしなければならないのだ。」(村瀬秀信「ロイホがロイホであるために」より)    そう、ロイホを楽しむためにロイホ感性をインストールしなければならないらしい。ロイホ感性……もはや、言語学習とも言えるだろう。    目的が明らかになれば、俄然やる気が出る。私は『ロイヤルホストで夜まで語りたい』を読み進めた。    栗の入った不思議なドリア「コスモドリア」の存在、甘くないがまさに楽園を想起させる「パラティー」こと「パラダイストロピカルアイスティ」……。    この本は、ロイヤルホストに行ったことのない人がロイホ感性をインストールするための本でもあるし、ロイホ感性を持つ人が「わかる〜」と気持ちよくなれる本でもある、ということだ。    そして、ロイホは食における地上の語彙を超えた存在である、と知る。    「「僕にとってそれがロイホやな。好きなときにロイヤルホストに来られるくらいの経済力を維持していたい」私をはじめ、その場にいた作家たちは深く頷いたものだ。(織守きょうや「ロイヤルホスト慕情」より)    なんと! ロイヤルホストは、作家の経済力のモノサシにもなっていたのだ。す、すごくない……?    なんだかもうロイホ感性が仮インストールされた状態である。いまロイホに行ったら楽しめそう、と公式HPでグランドメニューを眺める毎日。確定申告を終えたらランチに行こうかなとマップに「ロイヤルホスト」と入力したら、車で20分と表示された。うーん。    ロイヤルホストにはまだ行けていない。それでも間違いなく言えるのは、この本を読んでから行くロイヤルホストは、きっと、そうでない場合に比べて何倍も楽しい。    あーあ。はやく行きたいな。    ※イラン攻撃にまつわる政府の対応などが酷すぎて辛く、平和なエッセイも読むようにしています ※未来のために闘うことも今を楽しむことも、守っていきたい権利です
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