
プールに降る雨
@amewayamanai
2026年3月22日
ナチスのキッチン
藤原辰史
読み始めた
“それゆえ、十九世紀中頃から二十世紀中頃までのドイツの台所の歴史は、ナチズムの時代になると混乱をきたす。なぜ、バウハウスを攻撃しながら、テイラー主義を否定しなかったのか。「血と土」と「合理化」はどうして並存できたのか。「労働調和」への希求と銑鉄労働者を牡牛に喩える世界観が併存するテイラー主義の矛盾と、どこかに関係はないのか。「伝統」と「テクノロジー」の共存は、しばしば指摘されるナチスの二律背反であるが、この問題に台所という視点から迫ってみること、これが本書の目的である。”p.26
“それゆえに、本書は台所の諸構成要素の関係史、つまり台所の環境の歴史であり、同時にまた台所の思想の歴史でもある。ほかの生きものを食べなければ生きていけないヒトの「外部器官」、自然を改変する人間の作業の最終地点、あらぶる火の力に対する信仰と制御の場、人間社会の原型である男女の非対称的関係の表出の場──つまり台所とは、人間が生態系のなかで「住まい」を囲うときにどうしても残しておかなくてはならない生態系との通路なのである。このような見方をすることで、台所で行為する人間を「労働者」、台所仕事を「労働」という近代的概念によって規定してしまうことで漏れ落ちる、台所の生態学的な性質を救い出すことができるのではないか。”p.35

