ナチスのキッチン
5件の記録
プールに降る雨@amewayamanai2026年4月18日読み始めた読み終わった“それゆえ、十九世紀中頃から二十世紀中頃までのドイツの台所の歴史は、ナチズムの時代になると混乱をきたす。なぜ、バウハウスを攻撃しながら、テイラー主義を否定しなかったのか。「血と土」と「合理化」はどうして並存できたのか。「労働調和」への希求と銑鉄労働者を牡牛に喩える世界観が併存するテイラー主義の矛盾と、どこかに関係はないのか。「伝統」と「テクノロジー」の共存は、しばしば指摘されるナチスの二律背反であるが、この問題に台所という視点から迫ってみること、これが本書の目的である。”p.26 “それゆえに、本書は台所の諸構成要素の関係史、つまり台所の環境の歴史であり、同時にまた台所の思想の歴史でもある。ほかの生きものを食べなければ生きていけないヒトの「外部器官」、自然を改変する人間の作業の最終地点、あらぶる火の力に対する信仰と制御の場、人間社会の原型である男女の非対称的関係の表出の場──つまり台所とは、人間が生態系のなかで「住まい」を囲うときにどうしても残しておかなくてはならない生態系との通路なのである。このような見方をすることで、台所で行為する人間を「労働者」、台所仕事を「労働」という近代的概念によって規定してしまうことで漏れ落ちる、台所の生態学的な性質を救い出すことができるのではないか。”p.35 “労働の代価として、生命をギリギリで保つ分量のパンとスープだけしか与えないという施設は、人件費を極限までゼロに近づける資本主義によって実現された「ユートピア」でもある。この、一度表出した無意識は元に戻りえないし、現に戻っていない。ナチズムは、テイラー主義によって、資本主義の無意識を暴走させたのである。”p.425 ナチス政権下、戦争に勝つため限られた資源を無駄なく利用する必要に迫られた結果、徹底的な合理化、人間の機械化が推し進められた。 その犠牲になったのは、台所の主婦であり、強制収容所の囚人であった。 ナチズムの精神は、成長至上主義を掲げる資本主義というかたちで現在も生きている。 それは自然と人間社会、双方の循環システムを無視することで歪みをもたらす。 食という芸術に光をあて、台所を救出、再生せよ。 人間を人間でなくさせる資本主義からわれわれの美を奪還せよ。



