
たま子
@tama_co_co
2026年3月22日
誰でもない
ファン・ジョンウン,
斎藤真理子
読み終わった
わたしは誰でもない(とるにたりない)し、わたしにとってあの人たちは誰でもない、と思うとき、人はいろんなことを諦めている。そしてそんな風に思わなければ生きていけない瞬間がこの世界にはいかに多いことか。だけどほんとうは誰もが、誰でもない(代わりのいない)存在のはずなのだ。これまで読んだファン・ジョンウン作品のなかでいちばんすきな本になった。なかでも『ミョンシル』がすき。喪失の痛みと、その空白へ差す光。
「こうやって座ったまま、あと何度の冬を迎えることになるのだろう。そして何度の春と何度の夏を。彼女は考える。死んだあともシリーに会えるという思いが、なんて手におえない想像であるかを。なんて手に余る、空しい思いであるかを。そして空しいながらにそれは、なんて美しかったろう。それが必要だった。すべてのものが消えてゆくこのときに。暗闇を水平線で分ける明かりのようなもの、それがあそこにあるという、しるしのようなものが。その、美しいものが必要だった。」p125









