"幻惑の死と使途" 2026年3月24日

@s_ota92
2026年3月24日
幻惑の死と使途
p24 「それとも、変わらないように見せているだけなのか。たぶん、頭の良い人間ならそれが可能だろう。正真正銘のカマトトになったのかもしれない。」 p34 「「毒をもって毒を制する、だ。」」 p38 「「一度は、冷凍庫みたいな部屋に閉じ込められて凍え死ぬところだったし、それから猟銃で狙われて、あと、殺人犯に拉致されて海に投げ込まれそうになって……。」」 p50 「だが、優れた観察眼を持つ少数の人間は、国枝桃子を見て、多少女性っぽい男性だと思うだろう。」 p65 「「女の子っていう単語が、不適切に使われています。」」 p80 「対照的に、中学生の頃から読み続けてきたミステリィは、近頃明らかに食傷気味だった。」 p90 「その目的に犀川の手が使われた過去の事例を見つけようとしたら、きっと彼が幼稚園の頃まで歴史を遡る必要があるだろう。」 p96 「真夏の空は、灰色の雲で覆われ、鈍い眩しさだった。」 p104 「人々をあっと言わせたその小道具は、しかし、手品ではなかった。衣裳と同じ真っ赤な血も、本ものだった。」 p118 「三秒ほどタイムラグがあったが、三浦刑事と鵜飼刑事は、ゆっくりと無言で眼差しを交わした。」 p129 「蛇足ではあるが、T•Mというのは、都馬と萌絵のイニシャルからとったものだ。三色の長毛犬もこのサークルの名誉会員だった。」 p136 「つまり、純粋に餃子を作って食べることに集中する会なのである。」 p139 「「私、自分の見たものしか信じないから……。」」 p145 「どこにいてもアイコンのように目立つ大男である。」 p160 「人工物だから、生も死も相応しくない。その不自然さが恐ろしかった。捨てられてしまった人形みたいだった。」 p161 「「諸君……。私は、この危機から諸君の期待どおり生還しよう。私は、最悪の条件、最大の難関から脱出する。諸君が私の名を心の中で呼べば、どんな就縛からも逃れてみせよう。一度でも、私の名を叫べば、どんな密室からも抜け出してみせよう。私は、必ずや脱出する。それが、私の名前だからだ。」」 p168 「「私は、必ずや脱出する。それが、私の名前だからだ。」」 p176 「しかし、過去に一度、彼女のとんでもないペテンに引っかかった苦い経験もある。「諺で言うと……。」犀川は独り言を呟いた。あつものに懲りてなますを吹く。」 p186 「「あるよ。いつだって、最優先の問題がある。世界で僕しか考えていない謎があるからね。」」 p193 「「間違っているのは、観察している人間の認識だ。したがって、人間さえ見ていなければ、何も不思議は起こらない。すべて自然現象だ。」」 p194 「「何と何を交換したのでしょう?」「リスクとプロフィット。」」 p229 「「刑事さんと会うよりは、少しはアルカリ性……、いやベジタブルだね。」」 p233 「「僕が乗るんだから、ボディの外側の色なんて見えないじゃないか。関係ないよ。別に黄色でも良い。」」 p234 「彼はほとんど表情を変えないが、機嫌が良いのか悪いのかは、萌絵には確実に判別できる。今の犀川は上機嫌だ。」 p236 「ちょっとしたことから、相手を憎み、憎むことで、また妄想が拡大する。人間だけが殺人を行うのは、人間だけにあるこの創造能力のためだろう。」 p242 「「そうですね、僕は、ミルクとコーヒーを半々でカクテルにしてよく飲みますけど、それだって、特技かもしれないし、あるいは、マジックだと思う人がいるかもしれませんね。」」 p249 「「先生が浦島太郎だったら、きっと、玉手箱を開けなかったでしょうね。」」 p249 「しかし、解かなくてはいけない問題の難度を、それに取り組んでいる頭脳の数(あるいは思考力の総量)で割った値が、犀川の思考対象選択の優先順位を決める。」 p250 「人間の一生のように、そんな思考は一瞬だった。」 p277 「「用事がなかったら、電話しちゃいけませんか?」」 p281 「「たぶん、力学の勉強をしたせいだろうね。一度でも真の静寂を知ると、ピンが落ちた音でもびっくりするもんだ。」」 p282 「「誰でも、自分に足りないところ、弱いところを、カバーしようとする。そうやって、何重にもバリアを張っていくのさ。その繰り返しで、大人になって、成長して……。そう、君は、もっと怖がった方が良い。常々、僕はそう思っていたよ。君も、たぶん自分でそう思ったんだね。君を作っているのは、君自身の思考なんだから。」」 p286 「「今でも、何か不思議なことに出会うと、僕は、自分の知らない法則だと思うことにしている。ときには、世の中の誰も知らない法則かもしれない。」」 p286 「「大人になるほど、こんな素敵は少なくなる。努力して探し回らないと見つからない。このまえ、君は、科学がただの記号だって言ったけど、そのとおりなんだ。記号を覚え、数式を組み立てることによって、僕らは大好きだった不思議を排除する。何故だろう?そうしないと、新しい不思議が見つからないからさ。探し回って、たまに少し素敵な不思議を見つけては、また、そいつらを一つずつ消していくんだ。もっともっと凄い不思議に出会えると信じてね……。でも、記号なんて、金魚すくいの紙の網みたいにさ、きっと、いつかは破れてしまうだろう。たぶん、それを心のどこかで期待している。金魚すくいをする子供だって、最初から網が破れることを知っているんだよ。」」 p290 「しかし、世の中には追求しない方が素敵な不思議もある。」 p290 「「昨夜は、本当にありがとうございました。もう、お嬢様のお元気がないと、私といたしましても、哀感と申すのでございましょうか……、この身が締めつけられるような思いでございまして、ええ、本当に、犀川先生がいらっしゃって、助かりました、と言っては、あるいは失礼かもしれませんが、先生だけが、その、頼みの綱とでも申しますか、どうか、今後とも、お嬢様のことをよろしくお願いいたしたいと存じます。」」 p299 「この犬は、散歩と食事以外の時間を、だいたい睡眠に当てている。そう決めているらしい。」 p305 「人間、多くを望んではいけない、というのが彼の座右の銘でもある。」 p319 「「君の思考の道筋に興味がある。」」 p329 「これまでの事件(正確には5例であるが)に、疑問点は残っていない。」 p330 「積極的な姿勢で立ち向かえば、風はより強くなる。」 p364 「今年の春に、犀川と萌絵は、区役所に提出する婚姻届に署名、捺印した。」 p394 「馬鹿馬鹿しい、という犀川の言葉で、国枝を連想したからだ。」 p399 「本当にしたい話、一番したい話は明らかだったが、ラムネのビー玉みたいに、それはいつだって、言い出せない。」 p402 「「誠に申し訳ございません、お嬢様。」と諏訪野の上品な声。」 p408 「諏訪野は、彼女に熱いコーヒーなど出さない。しかも、朝はいつも、少し苦目の一杯を出してくれた。」 p415 「「ものには、すべて名前がある。」」 p415 「人が死ぬことによって失われるものは、個人のパーソナリティであり、さらに厳密には、その人間の思考である。」 p438 「彼女が、そんな幻惑から逃れることができたのは、一つには、科学的な知識を豊富に持った両親のおかげであり、もう一つは、目の前でその両親を失ったからだ。」 p439 「(ものには、すべて名前がある。)」 p440 「犀川の破滅的な精神を救えるのは、たぶん自分だけだ、と萌絵は思いたかった。」 p441 「いつだって、目標は、目標を目指す者に、別の方向から、突然ひょっこりと顔を出す。」 p442 「こうしてみると、ある個人の思考が、別の人間に伝達する一瞬こそ「奇跡の脱出」、ミラクル・エスケープに他ならない。」 p455 「犀川の車を自分で運転してきたのは、つまり、あとで犀川に自宅まで送ってもらおうという、極めてプリミティヴでクリアなプランだった。たぶん、日本語にすれば、「下心」あるいは「魂胆」と訳すのだろう。」 p458 「(先生は気づいていた!)」 p459 「色にはないが、形には好き嫌いのある犀川である。」 p466 「諏訪野は長い言い訳をしようとしたが、結局、ナンバを教えてくれた。」 p472 「「もうすぐ、警察が来ます。これは、脅しじゃありません。最後まで紳士的に行動して下さい。それが……、それが、貴方の名前のためです。」」 p477 「白いはずの鳩は、すべてシルエットになって、黒く見える。犀川が鳩の数を数えていたことを彼女は思い出した。」 p481 「(先生は、やっぱりわかっていた。)」 p483 「その女の目は、宙を見たまま動かない。だが、その目から、女は涙を流していた。」 p491 「「名前のためですか?」犀川は叫んだ。」 p491 「「私は……、どんな状況からでも、脱出してみせよう。」」 p492 「「皆が、私の名を、呼ぶかぎり……、私は、抜け出してみせよう。」」 p495 「「有里匠幻……。有里匠幻!」」 p498 「「ラスト・イリュージョンだ。」犀川は苦い煙を吐く。そう、これが、ラスト・エスケープだった。「最後の脱出だったね。」」 p499 「何色の煙に乗って、彼は天に上っただろう。」 p504 「「あの家庭こそ、彼のステージだったんですね。」」 p505 「「でも、鳩を数えたあと、潜水夫を数えたからね。」」 p509 「「人間のすべての思考、行動……、創造も破壊も、みんな名前によって始まる。」」 p513 「「信じられないかもしれないけど、名前を愛することで、彼自身が有里匠幻になったといって良い。彼は、本ものの有里匠幻以上に、有里匠幻の名前を愛した。これは、ファンではない。彼自身が有里匠幻だったのと同じことなんだ。」」 p516 「彼女?真賀田四季か。西之園萌絵か。」 p518 「「承知いたしました。少々お待ちいただけますか。ええ、諏訪野にお任せください。」」 p521 「「あちらこちらに、内緒のカードが隠してありますのよ。」」 p521 「「お綺麗ですよ。」」 p523 「「最高に綺麗なスイッチだね。」」 p543 「「彼のセンセーショナルな死を見せることにも、もちろん意味があったと思いますけれど、そのあとで、もっとセンセーショナルな脱出を見せる。原沼さんは、それをしたかったのだと思います。現に、有里匠幻の棺脱出は、日本中で話題になりましたよね。マジックの頂点を究めたわけです。」」 p544 「沈黙の幕が下りたが、諏訪野がコーヒーを持って入ってきた。」 p545 「「動機を理解することが重要とは思えません。殺人者の動機を理解すれば、私たちはそれで安心できますか?理解することに、どんな意味があるでしょうか?」」 p547 「「僕は……、その……、殺されたのは有里匠幻でなない、と思っているんですよ。まあ、それだけの違いです。」」 p549 「「彼は、僕たちに最後のイリュージョンを見せてくれました。あの火炎のマジックは、実に見事なものだった。青から黄色、そして赤に炎の色が変化しました。有里匠幻は、その炎の中で亡くなった。とても綺麗でした。」」 p554 「「綺麗という形容詞は、たぶん、人間の生き方を形容するための言葉だ。服装とかじゃなくてね。」」 p556 「「人を殺す動機なんて、一つや二つの言葉で説明できるものではありませんからね。確かに、こうして話をしてもしかたがない。我々は、ただひたすら、自分たちの精神安定のために、自分たちを納得させてくれる都合の良い理屈を構築しているに過ぎません。殺人犯の動機なんて、事件に関係のない者のために用意された幻想です。それだけの意味しかない。起こってしまった事実とは、何ら関係のないものです。これもまた、イリュージョンでしょう。」」 p557 「有里匠幻の名を呼ぶ者が、もういなかったからだ。」 p558 「「それは君の評価だ。」「天王寺博士みたい……。」」
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