
綾鷹
@ayataka
2026年3月25日
集団浅慮
古賀史健
フジテレビの性暴力事件を通じて、日本企業が「集団浅慮」に陥るメカニズ ムを解明する。同質性の高い壮年男性で構成された組織が、なぜ重大な人権 侵害を見過ごし、道を誤るのか。凝集 性の高い集団における同調圧力、思考の閉鎖性、そして「オールドボーイズクラブ」の危険性を分析し、真のダイバーシティと人権知識の必要性を説く。
とても勉強になった。
本書で書かれている「集団浅慮」に陥る組織の特徴が正に自社と重なりすぎて...会社の特に上層部に読んでほしい本だった。
「思いやり」と「尊重」の違いは今まで違和感を感じていたことを言語化してもらった気持ち。
また、自分の無意識の偏見にも改めて気付かせられた。
自分も相手を尊重できるようでありたい。
第1章:中居正広氏による性暴力事案から女性Aが退職するための流れ。
・女性Aの気持ちは尊重されず、専門家(産業医、主治医等)に確認もされず、社内での真っ当な懸念はいつの間にか消され、フジテレビ上層部が思い込みで間違った判断をしていく様子がわかりやすい。
第2章: 「同質性の高い中年男性」による意思決定の誤りを「集団浅慮」の観点から読み解き。
・個人としては優秀であるはずの人々が集団として意思決定を図ろうとしたとき、目も当てられないほど愚かな判断ミスを犯してしまう。これを「集団浅慮」と呼ぶ。
・集団浅慮のポイントは、組織における「凝集性」(組織に対する忠誠心、企業で言うところの愛社精神、メンバー間の結束力、団結心、一体感、仲の良さまで含まれる概念)の高さ
・凝集性が高いほど組織の規範への同調が高まっていく。すなわち、組織内における「同調圧力」が発生する。
・凝集性の高い集団は「議論」を嫌い、「熟慮」を嫌う。同調圧力の強い組織に心理的安全性はない。
・集団浅慮に陥った組織は、「集団への過大評価」「思考の開鎖性」「全会一致への圧力」という症状を呈する。
・凝固性が高く「いいチーム」だったはずの組織が、容易に「愚かなチーム」に変貌していく要因は同質性と日本的オールドボーイズクラブ。
・「どうすれば集団浅慮を防ぐことができるのか」ということについて、具体的に3つの「処方箋」と、6つの「付加的処方箋」が提示されている。
第3章: 集団浅慮を避けるための方策としてのダイバーシティを掘り下げ。
・本書では多様性のことを、もっぱら「非同質性」として、つまり「同質性の対義語」として考えている。
・ダイバーシティの第一段階「差別と公正性のパラダイム」は、すべてのメンバーを差別しないことに主眼が置かれていた。(マジョリティへの同化、日本で言えば「おっさん化」すること)
・ダイバーシティの第二段階「アクセスと正統性のパラダイム」は、メンバー間の「違い」を積極的に認め、それを活かそうとするマネジメント。市場の多様性に合わせて、組織のメンバーも多様化させる。しかしこれは、マイノリティに限定的な活躍の場を与えているに過ぎず、部署間の対立を招くことも多かった。(女性編集者は女性誌のみ担当等)
・ダイバーシティの第三段階「学習と有効性のパラダイム」は「差別と公正性のパラダイム」と同じく、すべての従業員の機会均等を促す。
そして「アクセスと正統性のパラダイム」と同じく、すべての従業員の「違い」を認めた上で、その「違い」に価値を置く。さらに、すべての従業員の「違い」を社内に取り込んで、「違い」から学び、互いの成長につなげていく。これが近年よく語られるダイバーシティ&インクルージョン(D&I / 多様性と包摂性)と呼ばれるもの。ここでの包摂とは「受け入れること」ではなく、「学習」と言い換えたほうがよく、経営層やマジョリティ側がいかにして「違い」から多くを学んでいくかが問われている。
・女性たちがトークン(逸脱者)の立場から脱却するためには、シンプルに、数を増やすことが必要。その分岐点として一般に「黄金の3割」という理論がある。(女性の割合が35%を超えると、少数派として聞く耳を持ってもらえる)
第4章: 「ビジネスと人権」について考えを深める。
・われわれ日本人は、人権の「意識」が低いのではなく、その「知識」が圧倒的に足りていない。グローバルスタンダードとしての「人権」を知らず、ローカルな慣習で、また「親切で善良な国民性」でそれを補ってきたため、身近な人権侵害に鈍感になっている。
・人権を侵害しないためには「尊重」がポイント。尊重は、「善意」や「思いやり」と混同されやすい。「思いやり」には、どうしても独善性がつきまとうが、「尊重」はその人の意思や決断を受け入れること。


