八玖 "君のクイズ" 2026年3月26日

八玖
八玖
@rock5104
2026年3月26日
君のクイズ
最近QuizKnockの動画にハマり、アプリで早押しクイズをやったりもしてるので気になって購入。  サラッと読めたし面白かった。エンタメ的な明るい読後感ではないが、穏やかで少し苦味を感じる終わり方も個人的には好みだった。  ゼロ文字押しの答えが知りたくて序盤は足早に読み進めていったが、読ませ押しや確定ポイントなど「何となく聞いたことあるけど、こんなに深い考察がされていたのか!」となる競技クイズの技術や、クイズと結びついた三島の人生を追っていくうちに物語自体にも引き込まれていった。  作中で最も共感したのは、「クイズに答えているとき、自分という金網を使って、世界をすくいあげているような気分になることがある。」という一文から始まる段落だった。世界を掬い上げる金網を人生経験によって広く、目を細かくする。人生経験の多さ、豊かさがクイズの答えを導く。そこまで重厚な人生経験は私には無いが、「あの本で読んだ!」「地元の問題だ!」といった気づきから正解できると、単に知識として覚えていた時よりも嬉しい。当たり前だが、クイズプレイヤーの人々もそういう自分の人生に紐付いた特別な「僕のクイズ」をそれぞれに持っているんだろうなと思われて、少しだけ彼らが身近に感じられた。  三島が様々な手がかりから推測し組み立てていったゼロ文字押しの真相と本庄の人間像の正解は、作中ではかなり俗な形として示される。三島は憤るが、それは自身が考察の中で本庄の勝手な偶像を作り上げていたからだということに気づき、彼と完全に決別する。私は、三島の出したこの答えがとても好きだ。解説では作中における本庄の人間像は、あくまで三島の解釈によるものとされている。その解釈が誤っている(本庄はあくまで求められた姿を演じているだけ)かもしれない。また、仮に三島の解釈が当たっていたとしても、クイズ人生の中で変化してきた三島と同じく、本庄もまた今後の人生の中で変わっていく可能性もある。日本で一番低い山が、天保山から日和山に変わったように。けれど「本庄絆はどんな人間か?」という問題に、三島玲央が答えることはもうない。それが同じ場所に立ちながら「競技クイズ」と「クイズ番組」という決定的に異なるクイズに挑んだふたりの終着点として、最高に美しい形だと思える。
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