長谷川竜也
@Lyuya_H
2026年3月27日
5A73
詠坂雄二
読み終わった
小説を読んでいると、名作を確信する瞬間がある。『プロジェクト・ヘイル・メアリー』で例えるなら、一章末の一文を読んだ時だった。思わず口角がニヤリと吊り上がるあの感覚だ。理解できる人は少なくないと思う。
『5A73』の場合は前書だった。タイトル選定に係る経緯を説明されている時、気づけばニヤリとしてしまっていた。その時やはり、名作を確信した。
物語は「暃」という、“表記はできるが意味も音も持たない文字”、いわゆる幽霊文字を中心に展開されていく。
「暃」が“持ちうる”意味と音を考察しながら物語が進む様はとてもワクワクした。
JIS規格を定める際の手違いと言ってしまえばそうなのだが、それではフィクションは楽しめない。
事件を追う警察の視点と、事件の当事者たちの視点が交互に描かれる構成であり、これも没入感を高める一因になっている。
また、掛け合い台詞も現代の口語に近い柔らかさがあり、非常に読みやすかった。
特筆すべきはラストの展開。
正直に言って、終盤に迫るにつれ、ある種の“まずさ”は感じていた。
これもまた本を読む人なら理解してくれるかと思う。
左手で押さえているページの厚みと、目に飛び込んでくる内容の齟齬というか、「大丈夫か、これ?」とか、「どう収集つけるのだろう」といった焦りに似た“まずさ”である。
読み終わった時、「ミスった」と思った。読み方を間違えた。
これはひとえに私のミステリー経験の浅さからくるものであると思う。
いわゆる本格として読んでしまっていたが、ファンタジーとして読むべきだった。
ムチャに論理を通すのではなく、ムチャをムチャとして楽しむべきだった。
『変な地図』を読んだ時も似たようなことを思ったのを覚えている。
これはおそらく、詠坂雄二作品の経験値が足りないが故の感想であり、もっと氏の“色”みたいなものを把握して読んでいれば、もっと没頭できたと後悔した。
次は同氏の『君待秋ラは透きとおる』を読んでみたい。

