
いーじーらいす
@EasyRICE
2026年3月28日

自分ひとりの部屋 (平凡社ライブラリー831)
ヴァージニア・ウルフ
読み終わった
第五章より
「立ち止まって罵ったら負けだからね――と、わたしは彼女に言いました。同じように、立ち止まって笑っても負けになる。ためらって口籠っても駄目。跳躍することだけを考えてねと、まるで全財産を彼女の背に賭けたみたいに、わたしは懇願しました。彼女は鳥のように飛び越えました。でもその向こうにも、またその向こうにもフェンスがあります。手を打ち鳴らす音と喚き声は神経に障りそうだったので、持ちこたえる力があるだろうかとわたしは危ぶみました。でも彼女は最善を尽くしました。メアリー・カーマイクルが天才ではなく、名もない若い女性で、寝室と居室を兼ねた一部屋で最初の小説を書いていて、時間やお金や余暇といった望ましいものも十分にないことを考えれば、そう不味い出来でもないと、わたしは思いました。
あと百年あげよう――と、わたしは最終章を読みながら結論を出しました。そこには〈だれかが客間のカーテンをぐいと引っ張ったために、人びとの鼻とあらわな肩の向こうに、星々の輝く夜空が見えた〉とありました。彼女に自分ひとりの部屋と五百ポンドをあげよう。心にあることを語ってもらい、いま本に詰め込んでいることの半分を除いてもらおう。そうすれば、いつかもっと良い本が書けるはず。 メアリー・カーマイクル作『人生の冒険』を本棚の端に戻しつつ、わたしは言いました――あと百年経てば、彼女は詩人になるでしょう。」