
ひなあられ
@03_o0
2026年3月29日
蜜蜂と遠雷(上)
恩田陸
かつて読んだ
感想
当時読んでいた時の感想。
時間を決めて読むもんではない。も〜〜〜まだ読みたいのに〜〜〜とウジウジしながら本を閉じるのが苦しすぎる。
結構時間をかけて読んでいたのだが、エントリーから第1次予選にかけての士気の高まり方がすごい。「エントリー」で人々がそれぞれに散らばっていて、それぞれがそれぞれの思いや事情を抱えながら皆同じくピアノを愛していて、「第1次予選」でそれらが一気に集った感じがオールスターズ感があってアツい。それでいてなお蜜蜂王子が醸し出すラスボス感にも震える。
聞いた事のない曲でも鮮明に景色が思い浮かぶ。読む側の心をわしづかみにされる。数分間の音のつむぎが何百何千文字に込められていて、それぞれが違う味をもっていてすごくいい。
曲を知ってるともっと楽しめるんだろうけど、小説から新しく知識を得る、というのは読書の醍醐味でもあるような気がして、読書において「無知」とは食事における「空腹」と似たようなものなのかもなと思った。私は音楽に造詣が深い方ではないので、この小説は私にとってご馳走なような気がする。
ところで私は明石の演奏が好き。というか、満智子から見た明石が好き。満智子から語られる明石はとても立体的で、多面性を持っていて、その明石の奥行きを捉えられる満智子もまた、奥行きを持った人なんだろうなあと思った。
この小説の何がいいって審査員側の視点も細かく描かれているところ。4人の挑戦者たちはひとつの目的目標に向かって同じところに集うけれど、審査員側視点がなかったらたぶん私は演奏者側にすごく感情移入していたと思うから、それらが描かれることで「ああそういう考えもあるよな」と両者のバランスを取りつつ受け止められる。審査員も、演奏者も、等しく愛おしい、と。
感情表現がめっっっっっちゃこまかい。そんで的を射てる。こういう発言を受けた時この人はどんな反応をし、そこからどんな感情を抱き、そのごちゃまぜになってる感情の糸の塊をほどいている。同時にふたつの感情、ちぐはぐな感情が湧いた時って、その感情を抱いた本人でさえ困惑して戸惑うことがあると思っていて。けれど、なぜそんなちぐはぐのふたつの感情が湧いてきたのか?というのがこと細かく書いてあって、すごく読み応えがあり物語を理解する上での心強い手助けとなった。
おかげで思考のたどり着き方がスムーズ。
(蜜蜂王子の演奏がホフマンの音楽性を全否定したような演奏だったと言うのを聞いたナサニエルの「当惑と安堵」がまさにそれで。「なぜ敬愛する厳しい師がそんな生徒を教えていたのかという当惑。と同時に、敬愛する師の正当な衣鉢を継ぐものではなかったという安堵。」というのを読んでからほーーーーー???!なるほど!?と一瞬で糸の塊が解けていく感覚がすごく快感だった)
演奏者の背中がでかすぎる。。。。第1次予選でもう既に感動。。。。演奏を読んでから「エントリー」を読み直すとああそうだった、この人はこうだったとより深まる。より愛おしくなる。下が楽しみ。



