Lusna "悲しみの秘義 (文春文庫)" 2026年3月31日

Lusna
Lusna
@Estrella
2026年3月31日
悲しみの秘義 (文春文庫)
「それがあなた、死にました年でしたが、桜の花の散ります頃に。私がちょっと留守をしとりましたら、縁側に転げ出て、縁から落ちて、地面に這うとりましたですよ。たまがって駆け寄りましたら、かなわん指で、桜の花びらば拾おうとしよりましたです。曲った指で地面ににじりつけて、肘から血ぃ出して、『おかしゃん、はなば』ちゅうて、花びらの指すとですもんね。花もあなた、かわいそうに、地面ににじりつけられて。何の恨みも言わじゃった嫁入り前の娘が、たった一枚の桜の花びらば拾うのが、望みでした。それであなたにお願いですが、文(ふみ)ば、チッソの方々に、書いて下さいませんか。いや、世間の方々に。桜の時期に、花びらば一枚、きよ子のかわりに、拾うてやっては下さいませんでしょうか。花の供養に。」 桜の季節に毎年読む。
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