
彼らは読みつづけた
@findareading
2026年3月31日

ポケットに物語を入れて
角田光代
読み終わった
電子書籍
*読書で見つけた「読書(する人)」*
《第一章、ものごころついてから悟がはじめて会う父親、テッセイは、彼を江古田に連れていく。そのとき、次は江古田、という車内放送が聞こえ、私はぱっと顔を上げ、ぼんやりあたりを見まわした。物語と、自分のいる場所が、ごちゃまぜになって、軽く混乱していた。自分が物語のなかにいるような、隣の席にテッセイと悟が座っているような。
その日、私は江古田で用があったのだった。どんな用事だったのか、江古田でだれに会ったのか、そんなことはまったく覚えていないのに、西武池袋線のなかで読んだこの小説の第一章だけは、本当に、昨日のことのように思い出せる。テッセイが悟を連れていく居酒屋も、テッセイの住む安アパートも。》
— 角田光代著「恋のようなものと、ほんものの恋 佐藤多佳子『黄色い目の魚』(新潮文庫)」(『ポケットに物語を入れて』2017年4月Kindle版、小学館eBooks)


