村崎
@mrskntk
2024年6月12日

一番の恋人
君嶋彼方
呪いを呪いとして素直に受け取ること。それは自分が呪われていたこと、そして誰かを呪っていたことを認めることにもつながると思う。
男らしく生きてきたことに大きな疑問も苦痛も伴わなかった、それなりによい人生を送ってきた一番と、「普通」のなかで生きていたいアロマンティック・アセクシャルの千凪。世間と個人を取り巻く呪いと普通についての小説。
一番と千凪が、関係性を壊さずにこれからずっと一緒にいられるのかは正直わからない。でも一番でなくてもいいと思えることに安心できる一番は、恋愛でなくてもいい/結婚という形でなくてもいい、ということにゆっくりと気づけていけるのだと思う。そしてそれは千凪とふたりで進んでゆく道だろうから、その道がずっと続いていけばいいなと思う。
したいことと、しないこと。どちらも同じ分量で愛として感じられればいいけれど、それは難しいことなのでしょう。でも、愛が難しいのはどんな人間だって同じだよね。だれかと一緒にいることはすべてにおいて簡単じゃないし、普遍的な幸せなんてないのだと思った。