村崎
@mrskntk
2024年6月6日

鳥と港
佐原ひかり
ことばというのは誰かを喜ばせることも傷つけることも容易にできる。反対にまったく響かないことばというのもある。ことばは良くも悪くも「手段」だけど、狙っていないときほど届いたりもする。
自分のことばが思いがけず誰かの心にずっとずっと残るかもしれない。それは怖いことでもあるけれど、言葉を選び抜いて発信するようになってきている現代の、ひとつの希望でもあるのだと思う。
わたしが発したことばが誰かの心で生き続けていることがあるなら、そこに恐怖を感じたくない。春の真夜中を怖がっていた飛鳥が、海からくる春を自然に迎え入れるようになったように、ことばと生きていきたいと思う。読んだあと、ことばにすればするほどよさに気がつく小説でした。
