
ボク、ブラえもん。
@taishibrian
2025年3月5日

傲慢と善良
辻村深月
読み終わった
かつて読んだ
@ Sanchaco
人は何かを選ぶとき、無意識に自分自身のモノサシと比較する傲慢さを持っている。そして誰かに選んでもらって消極的に鈍感に過ごしていく善良さも同時に持ち合わせている。
たとえば誰かと会食する際に、自分が招待したり企画するときには恥ずかしくないようにとか変に思われたくないといった自意識で、そこそこのレベルの飲食店をあーだこーだと悩みながら選ぶケースがある。一方で自分が招待される場合だと、面倒に思われたくなくて同じメニューを頼んだり相手のオススメを鵜呑みにすることが多い。
この小説では、婚活をテーマにそんな人間の矛盾した性質をこれでもかとばかりに抉ってくる。傲慢かつ善良な主人公2人と、経験知に裏打ちされたえぐいことをサラリと指摘する登場人物たち。ミステリー仕立てで読み進めるに連れて、読者はこれは他でもない自分自身のことが描かれているのだと気づく。
地方の閉塞感だとか過剰な親子関係といったパーソナルな問題を、震災復興や地域活性化のようなソーシャルなテーマに紐づけて解決していく方向性は、立場的には少し安易に感じてしまったが、ベストセラーとなり映画化が決定するのも納得な内容だった。