
にっかり青江
@faizRDM
2026年4月3日
[映]アムリタ 新装版
野崎まど
読み終わった
登場人物の造形がやや漫画的で大味な印象を受けるが、もともとライトノベルに親しんでいた私にとっては読みやすかった。こうした作風に抵抗がある人は戸惑うかもしれないが、そこでページを閉じるのはもったいない。
かなり昔に読んだ作品なので記憶に自信はないが、常人の理解を超えた天才が、何かとてつもないことを行っているという「不気味さ」には、『すべてがFになる』を彷彿とさせるものがあった。
タイトルに「[映]」とある通り、本作は映画をテーマにした物語だ。
主人公たちが、天才監督の企画した「神の映画」を撮影する。これが物語の核になっているのだが、その全貌はなかなか見えてこない。序盤からその映画の凄まじさが語られるため、完成した映像が文章でどう表現されるのか期待に胸を膨らませる反面、「本当にそんな映画を活字で描き切れるのか」という一抹の不安を抱えながらページをめくっていた。
(以下、少々ネタバレを含みます)
物語も終盤に差し掛かると怒涛の展開が続き、抱いていた不安など完全に杞憂に終わった。主人公が謎を解き明かすいわゆる解決編でカタルシスを得て、このまま美しい幕引きを迎えるのだと思った矢先――「私は完成した『アムリタ』を、ある人に見せました」からの衝撃のラスト。主人公とシンクロするように激しく動揺させられた。
キャラクターたちの個性豊かな掛け合いで楽しく読ませてくれる一方で、終始どこか不気味な気配を纏いつつ、ミステリーとしての骨格もしっかりした良作だった。いくつか引っかかる点もあったものの、それを有無を言わさぬ引力でカバーするような圧倒的な熱量を感じた。

