日々の成果
@hibinoseika
2026年4月4日
白いしるし
西加奈子
読み終わった
恋愛の中でしか得られない感情ってやっぱりあるんだと思う。もちろん良いことも悪いことも。その感情の機微を的確に捉え、それを描くのがものすごく上手い。だから夏目と同じように読者も過去の恋愛を辿り、痛み、苦しみ、感情が揺れ動かされるのだろう。
夏目って人間として強いと思う。そして、そういう人間って中々いないと思う。
傷つくってわかっていながら、終わりがあるってわかりながら恋をすることの恐ろしさ。でも、止められない気持ち。ものすごく自分に正直に生きているから、自分にだけは嘘をつかずに生きているから、それが夏目が描いた絵に現れ、それを通じて間島にもちゃんと伝わったのだろう。
恋に抗えないのか、恋から逃げないのか、同じように見えてどこか違う気がする。
何のために絵を描くのか、私たちは芸術に何を求めているのか、何のために恋をするのか、どうして人間は恋をしてしまうのか、答えはないだろうし、わからないけど、その時々の感情や思いをそこに乗せて、価値を見出しているのだと思う。少しでも生きのびるために。好きという感情だったり、時には嫌いという感情だったり、色々、芸術にも恋愛にも、答えも正しさもないけど、その感情だけは、自分が感じた確かなその思いだけは間違いなく存在していて、本物なのだから。それはきっとすごく大事で、忘れないように、少しでも覚えているためにできるだけ目に見える形として、確かにあったしるしとして残すのだと思いたい。
“赤が嫌いなときに見る赤と、赤が大好きなときに見る赤は、全然違って見えるけど、赤そのものは、ずっと赤なんです。赤であり続けるだけ。見る人によって、それがまったく違う赤になるというだけで。“
そういう色んな思いをこの一文が背負ってくれていると思う。私はこの小説に恋愛の色んな感情を乗せて、価値を付けるのだと思う。大切な想いが詰まった小説として。
男性としてこの本を読んでみて、わかることもあったし、わからないこともあった。男性と女性で、もちろん人それぞれで、恋愛に対しての向き合い方は違うと思う。この物語の中にいる登場人物もみんなそれぞれ異なる感情を乗せて恋愛をしていた。そして苦しんでいた。でも、みんな間違いなく少しでも生きのびようとしているように私には見えた。


