
Hiroki
@teenageskaz79
2026年4月4日
バリ山行
松永K三蔵
読み終わった
語り手が職場の日常から感じる不安を背景にして、厳しい山歩きに身を投じていく様子が描かれる。物語は中盤以降、不穏な空気に飲まれていき、その不穏な空気は「バリ」と呼ばれる山歩きを通してより強くなる。
テネシーで毎年開催されるバークレーマラソンと呼ばれる過酷なウルトラトレイルがあるが、道なき道を歩くという意味ではこの「バリ」も同じくらい過酷であり、だけど孤独と向き合うものであるように思う。
語り手が肺炎から回復して、ホームセンターで買ったアイテムを身につけて鏡のまえに立つと「妻鹿さんが立っていた」(149)と述べる場面は、語り手が反発していた存在に取り込まれてしまった、または同一化とでもいうようなもの、あるいは不在となった「妻鹿さん」の役割を引き継いだようにも読め、非常に印象的だった。
テクニック的な側面では漢字の使い方もとても好感を持って読んだ。