猿馬大咳 "ダリの繭" 2026年4月2日

ダリの繭
ダリの繭
有栖川有栖
この作品は、「火村英生シリーズ」の二作目らしい。しかし僕は、有栖川有栖先生のネームバリューや、名だたる功績からこの本に辿り着いたのではなく、アイコンを見ていただければもう分かること──何を隠そう、僕もまたサルバドール・ダリの崇拝者なのだ。 大学生になったらダリ髭をつけたいし、幻想を愛したいし、年老いたら自叙伝書きたい。書きたいなあ。 脱線したが、「じゃあダリ信者さん、お前はこの本についてどう思ったんだい?」と問われれば、苦い顔をせざるを得ない。 ミステリとしてはよく出来た構成であるが、そこにダリを絡ませる意義を感じなかった……堂条秀一のために用意されただけ、とも言い換えられる。 接点があまりない……いや、全体を俯瞰すれば、ダリとガラの関係性、髭の謎なんかは非常に緻密に作り込まれているのだが、ダリという人物そのものに入れ込んでいる気がしてならない。 「ダリは画家である」──その事実をいまいち感じ取れなかったのもちょっとずつ惜しい。 多分、「わが秘められた生涯」を挫折した僕が言えることではない……しかし、人ばかりが目立って、彼らしい芸術的でありながら、欲求めいた話と言えば、そうとも言えない。 僕が偏屈なのだ、分かっている。理不尽という言葉があるが、それは大抵の場合、そう感じる自分が理を知らないだけなのかもしれない。 それに、一方的に思い込んで読んでいたのは僕の方だ。この本に文句をつけるのはもうこれきりだ。 最後の文句は、犯人が自らの罪を親しい人物に告白しながら、火村の推理と交代に場面が映し出されるところ。話し方が、なんというか、落ち着きすぎというか……とても精神的に追い詰められていたとは思えないくらいスラスラ話し始めるから、笑いそうになった。喋ってる状況もあいまって、尚更……。 人間ドラマが一気に無くなってしまうなあ、勿体無い、とも思った。 もう一度言うが、一読する価値はある。けれど、純粋に楽しめない僕のようなクソガキ読者のみんなは、ぜひシリーズの最初から読んでくれ。 こうなるぞ。 以上。
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