
ユメ
@yumeticmode
2025年3月15日

常設展示室
原田マハ
読み終わった
感想
絵画に希望や勇気、変化のきっかけをもらう女性たちの物語を6篇収録した短編集。ピカソ、フェルメール、ラファエロ、ゴッホ、マティス、そして東山魁夷。各話を彩る6枚の絵に共通しているのは、美術館の常設展示室に飾られているということ。趣向を凝らした企画展も素敵だが、繰り返し何度でも訪れることができる常設展もよいものだ。主人公たちは物語のあとも必ずまた絵に会いに行くのだろうなと思わされた。そう感じさせるほどにひしひしと伝わってくる、彼女たち——ひいては原田マハさんのアートに対する深い愛情が快い。
展示室で絵と対峙する主人公たちの感動が瑞々しく描かれているのもよかった。澄んだ湖の底の光の粒をまとった藻に、あるいは明るいひだまりになぞらえられる、絵の描写が美しい。なかでも、表紙にもなっているフェルメールの〈デルフトの眺望〉が窓に喩えられているのが好き。主人公たちにとってアートは、世界に向かって開かれた窓なのだ。


