ピエ "文字渦(新潮文庫)" 2026年3月20日

ピエ
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@pie_202
2026年3月20日
文字渦(新潮文庫)
目まぐるしく変貌する文字の渦に取り込まれてしまったかのような読書だった。しかし溺れているような感覚はない。文字たちの語りにはある種の秩序があり、こちらを置いてきぼりにはしない、人間への歩み寄りがあった。 だが、斬新で奇妙な小説ではある。ジャンルとしてはSFなのだろうか…ページをめくった瞬間のビジュアルに思わず噴き出してしまうような箇所もあり、あまり先の方までパラパラと見ずに、初めから読んでいく方が楽しいと思う。 どの短編も、初めは突拍子もないことを言っているように感じる。文字が闘ったり、光ったり、独立運動やスパイ活動をしている。しかし読み進めていくと、実はこの世界で既に起きていること、あるいは普通に起き得ることについて話しているのだと分かってくる。特に、文字による侵略戦争の話である「誤字」が好きだったのは、私がデジタルな文字の方に馴染みがあるからかもしれない(そもそも全体にコンピュータ言語やソフトウェアに関わる話が多いのだが)。 新たな話に入る度に、「次の話は私に理解できるだろうか…」と不安を抱きながら読み進めるのだが、気づけばどれも面白く読んでいた。私は知らない言葉が出てきても一々調べたりせず勘で読んでしまうのだが、高校レベルの教養しかなくてもまあ各話の大意は取れたのではないか…と信じたい。 とはいえ、巻末の解説を読むと、「えっそういうこと!? …ちょっと読み返してきてもいいですか」となることが何度も発生し、全く自信を失ってしまう。どうやら作者本人による解説がWeb上に存在するようなので、少し置いたら次はそちらを見ながら再読してみたい。
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