のーとみ "Ank : a mirror..." 2025年3月17日

のーとみ
@notomi
2025年3月17日
Ank : a mirroring ape
佐藤究「Ank:a mirroring ape」読んだ。この吉川英治文学新人賞と大藪春彦賞をダブル受賞してて、多分、発表当時も相当話題になっていたであろう大傑作を全く知らなかったのが口惜しいなあ。今更ながら読んで興奮してしまった。元SFマガジン編集長の今岡さんがよく「SFもミステリです」と言っていたけど、SF設定を倒叙ミステリ的に解決した上で、ドカンとSF的な謎解きを用意する、この作品の構成は、両方のジャンルの達成を踏まえた上で成り立つ奇想小説という感じで、それが面白くない訳がないのだ。動物パニック物としても、ゾンビ活劇としても、鏡に関するホラーとしても傑作。アイディアとしては、作者も言ってるように、ゾンビ物の新しい展開なのだけど、そこに人類の進化の謎を絡めて、ちゃんと事態の終息と、その先まで用意しているのは、本当凄い。よく思いついたなあ。きっかけはマイケル・ジャクソンとバブルス君だったと作者が言ってて、そのマイケルはスリラー歌ってるのがたまらんw 解決をパルクールと絡めたり、SNSやテレビを通してでも伝染する恐怖を実現してたりとディテールも上手い。で、最終的に「光」についての物語にしてしまう。文庫本で650ページがあっという間の一大エンターテインメント。京都が一日で崩壊する。なんか山田正紀的な物語を山田風太郎が書いてるみたいな小説で、これは恩田陸が言ってたけど、テスカポリトカにしても、これにしても、物凄く悲しくて悲惨でグロテスクな物語なのに、どこか明るくいのだ。その明るさが佐藤究の芸風なのだと思う。エモさの対極にある乾いた青空のような空気。だから佐藤究の小説は泣けない。でも大泣きした後の爽やかな気分になる。ああ、面白かった。これ、映画向きだと思うけど、やらないかなあ。捻ったゾンビ映画としての新基軸になるよー。
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