
torajiro
@torajiro
2026年4月4日

王墓の謎
河野一隆
読み終わった
古墳やピラミッドなど巨大な王墓はなぜ築かれ、そして衰退していったのか。強大な王がその権力を誇示するために民衆に労働を強いて築かせた、というような話が図書館で読んだ「世界の歴史」的な漫画でも読んだ覚えがあって常識的に描かれているけど、私も子どもの頃からずっと疑問だった。そんな無駄なことする?と。だってその労働力で畑でも耕してもらった方が余程豊かになるなんてごく初歩的なシミュレーションゲームでだって当たり前の話で、古代に周囲を統一して権力者になるようなすごい人がそんなこともわからない訳ないよね、と。本書はそんな疑問に答える説を人類学的な視点を取り入れた比較考古学の知見から組み立てている。
贈与から発展した威信財経済と、自然災害など人にはどうしようもない大きな力への対象として、神に贈与を行う機構として王墓が築かれた。その際の王は、権力を独占した存在なのではなく、むしろ王墓とは神聖性が特定の個人に固定されることを避けるために人類が開発した優れた機構と言えるのではないかというのはなかなか面白い論理。その後王墓の巨大化や複合機能化が民と王との距離を遠くし、距離ができたことで生贄などもできなくなり神聖性が弱まると衰退していき、都市への注力に移っていったという辺りはわからなくもないけど、この辺りは王墓だけで論じるのは限界がある気がする。人口や都市のあり方、経済システムとも絡むし、だとすると少なくとも後期には王墓も神聖的な側面だけでなく、何か経済的な機能を持っていたとしてもおかしくないし、王墓がなく都市発展が進んだ地域との比較も必要でしょう。
まだまだ考えどころはあるけれど、それでも王墓の成立に対しての素朴な疑問にぶつかっていく面白い本だと思います。