
乖離
@karu
2026年4月5日
小山さんノート
小山さんノートワークショップ
読み終わった
厳しい貧困と暴力の中、書くことによって自尊心を保ち、幻想の力で苦しい生を耐えた路上生活者の女性のノート。
この不器用で気高い女性が生きているうちに、彼女の文章が人の目にも触れなかったことを切なく思います。
しかし、小山さんのノートを文字に起こし、出版までして届けてくださった人たちがいたことは、奇跡のような救いです。本当にありがとうございます。
理不尽な暴力と暴言に反発しようにも支配下から逃れられないもどかしさ。
明日の糧や心の安らぎすらしれない貧しさの心もとなさ。
小山さんとは異なる環境に身を置く私には、そのわびしさを真に知ることはできないのかもしれない。けれど、例えば人並み以下の自分を恥じて心がどうしょうもなく沈んでしまったときに、小山さんの言葉はそれでも自尊心を保ち生きていくヒントを与えてくれる気がしました。
小山さんの日々で特に印象的だったのは、「フランスに行く」「イタリアに行く」と言って、いきつけの喫茶店のお気に入りの席でノートを書いたり読み返したりすることを、心身を慰める時間としてとても大切にしていたことです。
読み始めたばかりの頃は、喫茶に通うお金をもっと衣食住を整え自立するために使えるのではと、うっすら思ってしまっていましたが、小山さんの切実な文章を読み進めるうちに、小山さんにとって喫茶店で書き物をする時間は、ただそれだけの時間ではなく、苦しい日々から遠く憧れの異国に地へ心を解き放ち、一人の人間として自由であるために必要なことだったのではないかと思うようになりました。
しかし、あまりに辛い現実を前には、美しい空想に身を浸すこともできないときもあると小山さんは知っていました。フィクションの効用と強さ、脆さ儚さをよくよく知り尽くした小山さんは、本当に素晴らしい文学者であったと思います。
友人に借りた本ですが、自分の手元にもぜひ置きたいので、新しく買おうと思います。
