
ハヤシKYヘイ
@heiheikyo1
2026年4月6日
女の子たち風船爆弾をつくる
小林エリカ
読み終わった
1935年、都内の女子小学生と思われる「わたし」という主語の語りが始まる。
「わたしは、姉と、母と、あるいは、お手伝いの子と、買い物へ行く。」
という感じの文体で、特定の個人ではなく複数の人間の総体として、戦前、戦中、戦後の時代を眺めていく。膨大な数の注がつけられ、kindleで読んだのだけど後ろ12%は参考文献の羅列に終始していてびっくりした。淡々と事実が並んでいき、実際の証言に基づく人の声が、戦争へと向かう時代を浮かび上がらせる。
少女たちのあこがれの的だった東京宝塚劇場はある時を境に、国によって秘密裏に開発された風船爆弾の製造工場となり、少女たちは様々なことを隠されたまま協力させられていたのだった。並行して宝塚歌劇団の団員が海外をまわった記録や、戦争の進行状況が記される。個人的に知らない事実がいくつもあり、自分の無知を恥じた。同時に、意識的に語り継いでいくイメージを持たないと、悲しみも、自国の過去の戦争責任もたやすく忘れ去られてしまうということを再認識させられた。
「わたしは、男だったらよかった。あるいは、わたしは、そんなことは考えない。」という印象的なフレーズが、何度も繰り返される。ジェンダーの不均衡が、戦時下において、よりいっそういびつな形で表出する。
本書で語られる、戦争を取り巻く情勢の変化が、今現在の世界の悲痛さとリンクしているように感じられ、なぜ人は過去に学べないのだと、悲しくなる。同時に、他人事にせず、冷笑的にならず、個々人の選択や行動の積み重ねで平和を作り上げるしかないのだということを、あらためて覚えておこうと思った。
