ユキヲ "月の裏側" 2026年4月7日

月の裏側
月の裏側
恩田陸
「蜜蜂と遠雷」が異能力の領域展開バトルに加え、一見凡庸にすら思える登場人物を深く魅力的に魅せる筆力に惹かれ、気になったこちらを一気に読了。 ジャンルが不明のまま読み進めるうち、これはホラーでありSFであり郷愁を重んじる日本人の心には殊更琴線を刺激する柔らかな物語なのだという確信が深まる。 恩田先生の、読者を登場人物に惹きつける描写は飲み込みやすいのに威力が凄まじい。 物語そのものに加え、一般小説世界では凡庸とも思える人物設定に鮮やかな肉や血を通わせる術には平伏せざるを得ない。 モヤモヤしながらXファイルを観て育った世代としては気持ちのいいくらいの怪異への巻き込まれぶりに惚れ惚れする。 いっそこれくらいの首突っ込みがいいんだよ。 人物の相関関係も程よくて良い。 多聞くんの底知れぬ人物像が物語の核となり牽引しているのは明らかだし、それに吸引されている協一郎、藍子親子の心情や行動にも納得。 ソラリスでは男女や人間関係の陰湿さやしつこさにうんざりしたが、こちらはとても清々しく感じる。 人によっては鬱陶しく感じるようだが、それも作家性との相性かも知れない。 猫ちゃんの描き方はもうひとつ。 夜ピクも読むかあ。 青春小説には興味が無いのだけれど。 個人的に実写化するなら協一郎は阿部寛、多聞くんは中村倫也、藍子はファーストサマーウイカを想定した。
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