
かけと
@kaketo_sato
2026年4月8日
この世の喜びよ
井戸川射子
読み終わった
ずっと誰かの視点から穂賀さんの日常を眺めている。モールで働く穂賀さんは、毎日そこに来る少女との会話の中で、娘と少女を重ねたり、自分の行いを顧みたりしながら、生活の中の些細なことにアドバイスをしたり、時にはできずにモヤモヤしたりと悩みながらもその時間を楽しみにしている。
今村夏子さんのむらさきスカートのように、物語の語り手が明らかにされるような仕掛けはなく、ひたすら謎の語り手によって物語が進んでいく。
二人称語りの文章。時折自分に向けてかけられた言葉のように感じられて不思議な読み心地。
「あなた」はモールが好きで、輝いて見えている。弟の世話に不満を抱く少女との会話を通して娘を育てた記憶や些細なやりとりを思い出し、おそらく嬉しく、また尊く感じている。たいそうなことを言うのでもなく、等身大のままの「あなた」の振る舞いから、この世の喜びを感じました。
