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@bunkobonsuki
2026年4月9日
私的読食録
堀江敏幸,
角田光代
二人の作家が、小説中に出てくる食事について語る読書録。かわるがわる書き手が交代していくので、読み味もその都度違ったものになっていく。
本書は単なる食事談にとどまらない。小説というフィクションが、時に現実を追い越す体験を提供できることを示している。
小説や童話で出てきた食べ物——うどんやラーメン、チョコレート——は、現実と同じはずなのに、架空の存在のように思える時がある。
例えば。志賀直哉の『小僧の神様』。
本作では寿司を逆さまにして食べるくだりがある。この時の描写が本当においしそうなので、読み終えた私はすぐに寿司を食べに行ってしまった。でも、そこで食べた寿司は志賀直哉の文章ほど優れてはいなかった。
現実にあるものを描写しながら、時に現実では成し得ない味を提供する。小説には現実を虚構にしてしまう魅力が詰まっている。






