読書猫 "旅する練習" 2026年4月4日

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2026年4月4日
旅する練習
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乗代雄介
(本文抜粋) “「書いてみろ」私はホテルのメモ帳とマジックを亜美の前に置いた。「これなら、だいたいみどりさんの手のひらと同じくらいだろ。一つずつ書いてみろ」 「書いたって一緒だよ」 「やってみろって」 「でも」と亜美は黙ってスクロールし直し、思い出そうとしている。 「心をこめて書いたんだろ」私は努めて静かに言った。「書いたことはなくならない」” ”「私もこんな風に生きられたらよかった」という急な声はいくぶん落ち着いていた。「誰かを応援するだけじゃなくて、誰かが応援せずにいられないような、そんなかっこいい生き方ができたら、もう少し自分を好きになれたかも知れない」“ ”亜美は私の肩に手を置いた。親しみからというよりもサッカー選手が試合前にする写真撮影のようで、私は中腰になっていたからなおさらだった。細い肩に手を置き返して前を向いた我々の様子は、パネルに隠れてみどりさんには見えないし、写真にも写っていない。横から誰かが見てくれていたら、その人がどこかで生きていることは私の大きな慰めになったと思うが、人は誰もいなかった。“
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