
乖離
@karu
2026年4月9日
神さまたちの遊ぶ庭
宮下奈都
読み終わった
北海道十勝、大雪山国立公園のなかにある山間の集落トムラウシ。小説家・宮下奈都が家族とともにトムラウシの壮大な自然と、小さな地域コミュニティの中で暮らした一年を綴ったエッセイ。
宮下家には3人の子どもたちがいる。中3の長男、中1の次男、小4の長女。
三者三様に個性的で、それでいて宮下さんの文章ににじむユーモアを備えている気配がする。
ほっこり面白く読む。
小中合わせて15人ばかりの学校で、大人たちに見守られながら自然の中で身体を動かしたり、力を合わせて表現をしたり、すごくのびのびとしたいい環境だと思う。
とは言え、締め切りや行事に追われるようすや、氷点下30度にも及ぶ厳しい寒さ、けっして極楽なばかりではない。
宮下家がやってくる前年、集落でたったひとりの中学生だったひまわりちゃんのひとことが印象的だった。
『お母さんは一対一のしんどさを知らないから』『何もかも見られてるひとりのしんどさは言葉じゃ表せないよ』p.129
私は、トムラウシもはるかに温暖である程度開けたそこそこの田舎出身だ。そこで一学年が手の指で足りる程度の少規模校に通っていたことがある。
地元での暮らしや母校での経験はかけがえのないものだったし、おかげで今の私があると思っているけど、就職で大都会に出て街で生まれ育った人と話していると経験してきたものの違いに愕然とすることがある。
どちらが良い悪いという単純な話では無い。
人は全てを手にすることはできないし、大人であれば何を得るのかをより主体的に選ぶことが出来るけど、どうしたって子どもは大人の選択に従うしかないときがある。
けれど、本書に出てくる親や大人たちは、この地で子どもたちが幸せで健やかであるように、愛情と責任感を持っているように見えて、そういう大人でありたいなと思った。
あと勝手に大人が心配するよりも遥かに子どもたちが逞しいということもある。
そういえば、こないだ読んだ『子どもの文化人類学』でも、土地土地の文学の中で子どもはぐんぐん成長していくということが描かれていた。
宮下家の3人の子どもたちも、一年のトムラウシの暮らしで、うんと成長したようす。
それをこんなにも美しく生き生きと書き留められる宮下先生を羨ましく思う。



