村崎 "蹴りたい背中" 2022年8月31日

村崎
@mrskntk
2022年8月31日
蹴りたい背中
蹴りたい背中
綿矢りさ
とにかくまず冒頭が完璧すぎる……。あらためて考えるとすごい、文章で胸がどきどきする。何度読んでも完成度というか表現力の高さに驚く。さびしは鳴る、という衝撃的な一文からまったく浮くことなく、つまりどういうことなのかをきれいに描写。ハツの性格を思うと、「胸を締めつけるから」というのがまたいい。 ハツからみたにな川は、すこしまぶしい。きらきら輝いているわけではないのに(むしろじめじめしている)、オリチャンという芯が一本通っているからか、くだらないと吐き捨てたくなるクラスメイトや部員とはどこか違ってみえる。そんなにな川に認められたい、自分をみてほしいと思う心理は痛いほどわかる。 自分が見下していたはずのクラスメイトたちが、本当は自分よりもいろいろなことを考えてくれていたのかもしれないと気づいてしまったときの恥ずかしさ、侮っていた教師が自分をみてくれていたことを知ったときの安堵感と情けなさ。そんな感情におそわれて逃げ出したくなった先にあったのが、にな川の背中だったのだと思った。
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