村崎 "ブラザーズ・ブラジャー" 2021年6月26日

村崎
@mrskntk
2021年6月26日
ブラザーズ・ブラジャー
父の再婚によって新しい母と弟と暮らすことになったちぐさ。ある日ちぐさは中学生の弟が自室のなかで女性用のブラジャーをつけているところに遭遇する。 ちぐさは、なんというか、ひとを傷つけないように生きていて、同時に自分が傷つかないようにも生きている。悪意はないけどその場をおだやかにたたむために嘘もつく。でもいつも嘘をついているわけじゃない。本心も話しているけど、でも、多くのひとがそれをおそれるように、本心のさらに奥にある気持ちは口に出さないようにしている。 晴彦の部屋で、ふたりしかいない空間で、ちぐさはブラジャーを好きな晴彦を認めた。だけど晴彦とブラジャーを買っているところを友人に見られたときに、ちぐさは晴彦のことを「妹」と言ってしまう。そのずるさは、きっと多くのひとが持っているずるさで、でもちぐさはそんなずるさを本当の本当は憎んでいることもわかる。 ブラジャーをつけている晴彦が、晴彦のほんの一面だけでしかないこと、見えなくても、隠している部分も、ぜんぶふくめて晴彦だったりちぐさだったりすること、そういう、わかっているようでわかりづらいことに、ちぐさとともに近づいていっているような、自分がすごくだれかのことをいとおしく思えるような、読んでいるときはそんな感覚がした。
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