
Tanya Ma
@neko23
2026年4月15日
傷の声
齋藤塔子
読み終わった
魂の一冊。著者の齋藤塔子さんは複雑性PTSDという非常に苦しい病と闘いながら東大を卒業され、看護師になり、本書を執筆直後26歳で亡くなった。齋藤さんは壮絶な家庭環境の中で育ち、子どもの頃に深く傷つきながら育ったことで、自己肯定感の基盤となる「湯船」がひび割れてしまっており、そこに周囲の人が「支援」、「承認」、「愛」といった「お湯」をどれだけ注ぎ込んでくれても、湯船のひび割れから流れていってしまい、自分は壊れてしまったままなのだ、と語っている。父がたくさんの蔵書を持っていたり、母がピアノの先生だったり、齋藤さんの育った家庭は外部から見れば経済水準や文化資本はむしろ高かったのではないかと推察されるが、その中で地獄としか言いようがない虐待やDVを受けられ、修復不能な傷を負われた。齋藤さんの周りには、彼女を献身的に支えたパートナー、仲間、専門職の方々がおられたことが分かるが、彼女が亡くなられたことを知った無念はいかばかりかと思う。齋藤さんは知的な人であり、深く傷つく覚悟を持って自身の燃え盛る傷を見据え、矛盾にまみれながらもそれを書くことを通じて制御し、自分の感じている世界を言葉によって伝えなければならないと強く感じておられた。彼女にはそれができる賢さ、表現力、胆力があったのに、亡くなられたことが本当に残念でならない。本書は社会に訴える迫力に満ちており、私は世界の見え方が変わった。
