もぐもぐ羊 "水脈を聴く男" 2026年4月17日

水脈を聴く男
水脈を聴く男
マイサラ・アフィーフィー,
ザフラーン・アルカースィミー,
⼭本薫
サーレムが水のありかを見つける才能が自分の幸福のために活かされることがないのが悲しかった。 村の人たちははじめは馬鹿にしていたけど、彼の才能が本物で干ばつから村を救った時には感謝をしたのに、そのことをすぐに忘れて悪口と噂話で彼を傷つけた。 さらにその評判を聞きつけたよその干ばつで苦しむ村から乞われて仕事をしに行った時に、子どもの頃に出会って忘れられなかった娘と再会し結婚したけど、作業中に父を事故で失った。 生き埋めになった父が遺言のように「故郷の水は腐っていてその水で人間も腐っているから村を出て暮らせ」と言っていた。 サーレムが可哀想で読んでて辛かった。 何か具合が悪いとジン(精霊)のせいにしたり、それを祓うためにする呪術など迷信だとは思いながらも、イスラム教以前からある土着の信仰は疎かにすることは不安になるし、それは世界共通だなと思った。 ただ溺死した女の腹の赤ん坊が生きているのに「イスラム法に反する」と生きたまま埋葬するように命じた長老と、命を蔑ろにすべきでないと腹を割いて赤ん坊を取り出した女の伯母の対比が印象的だった。 またその赤ん坊を溺死した母の腹から産まれた子どもとして忌子のように扱う村人が、干ばつで困った時にさんざんサーレム親子を馬鹿にしていたのにいざ水が出たら手のひら返しがすごかった。 子どもの時に大病を患った時に親に見放されて村の隅で隠遁生活をしていたワーヤムも干ばつの時にワーヤムの所の池にだけは水が枯れなかったので、村人が彼の水を分けてもらえるようお願いにきても断らずに配分したが、それまでは村人から無視された存在だった。 困った時に恥ずかしげもなく自分たちが蔑ろにしてきた者に頼らざるをえなくなった時、それに対する感謝のない村人にうんざりした。 蔑ろにされた者たちが蔑ろにされたままだったのも切ないが、世の中だいたいそんなもんだし報われることは少ないけど、せめてフィクションでは幸せになって欲しかったな。
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