Moonflower "渚にて" 2026年4月17日

渚にて
渚にて
ネヴィル・シュート,
佐藤龍雄
第五章 〜 第九章 【感想】 映画は新旧ともにかなり前に見ていたものの、原作は未読のままだった。 じっくり、丹念に登場人物とその周りの状況を描いていくあたり、同著者の『パイド・パイパー』とまったく同じ呼吸で何だか嬉しくなった。その分、物語の速度はゆっくりになるものの、だからこそ会話の妙や描写の簡潔さ的確さに唸らされる。 終末SFながらも、阿鼻叫喚の地獄絵図は一切ない。それこそ、気持いいほどまったくないのだ。その代わり、「確実な死を前にした」人びとが如何にしてその時まで生きた/生きようとしたのか、実に丁寧に描いている。読んでいて、時に胸が潰れそうにくらいに。 それなのに、あるいはそれゆえに、語りはカラッとしていて重さはひとかけらもなく、全般にわたって何とも言い難い「明るさ」が、それこそ、ある種の開き直りゆえの「明るい終末」が描かれている。 死の直前までいつも通りの生活を送ろうとする市井の人びとが、「さもありなん」という説得力でもってこの小説世界を生きている。その生活人としての「真っ当さ」は、終末でもないのにこの世の終わりの如く日々右往左往させられている現代人にこそ、より大きく響くのではないだろうか。
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