DN/HP "テスカトリポカ" 2026年4月20日

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2026年4月20日
テスカトリポカ
佐藤究さんのことを知ったのはわたしもこの作品が話題になったときなのだけど、すぐには手に取らずに、文庫化のタイミングで迷ったりしながら、それから5年。その間に彼の他の長編を3作と短編集を1冊読んだ後、遂に手に取るに至る、というタイミングと読み方。感慨がある。 ギュウギュウに詰まった情報量、疾走する物語、グルーヴをもたらすプロット、それらをまとめ上げる小説力。完璧なエンタメ小説である。そんな小説を読んだなら、考察というか解釈というか、思いつきを適当に書き散らしたい気もしてくるけれど、圧倒的なエンタメ作品の疾走する勢いに押し流され、グルーヴに巻き込まれながら一気に読み終えた後には、やっぱり一言だけで十分な気がしますね。 おもしろかった‼︎‼︎ ☝️ああ、でもひとつだけ。エピローグで祖母が孫たちに語る「アステカ」という言葉の意味、「アステカは湖の上の小さな島に暮らしていた。そこには水鳥——〈鷺(アサトル)〉がいたから〈驚の地(アストラン)〉というのさ。島に住んでいるのは〈鷺の地の人(アステカ)〉さ」という件を読んで、物語の主な舞台である川崎に東京と隔てるように流れている多摩川(メキシコとアメリカ、二つの世界を隔てるリオ・ブラボーにも喩えられる)も鷺の生息地(実際にわりと見かける)なんだよな、ということはメキシコにもルーツをもちながら、そこもまた驚の地である川崎生まれの少年はある意味で生まれながらにしてアステカだったということか、みたいなカタルシスを含んだ勝手な納得を最後にしたのでした。 📷写真はジャケットのアートワークとコーディネートしたかった石のベンチで撮りました。川名潤さんの装丁最高。 🎶 わりと序盤あたりからカリフォルニアのハードコアバンドXIBALBAの『Madre Mia Gracias por los Dias』というアルバムを流しながら読んでみた。なんとなくイメージで合わせてみたけれど、暴力と神話を扱う犯罪小説とドゥーミーにメタリックなスペイン語でも歌われるハードコアはかなり良い組み合わせでは、と思う。 バンド名のXIBALBAというのはマヤ神話で「恐怖の場所」「冥界」を意味する言葉だから、小説のタイトルのアステカの神であるテスカトリポカとは地域も時代もズレているんだけど、XIBALBAの最初の来日のときめちゃくちゃヤバいライブを観たのは小説の舞台のひとつである川崎の小さいライブハウスだったから、そんなところでこの組み合わせは筋が通っている、かもしれない。現在初期XIBALBAを再評価中である。 これは5年分は楽しんだと言っていいだろう。
テスカトリポカ
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