
roiban
@roiban
2026年4月20日
カフェーの帰り道
嶋津輝
読み終わった
良かった〜。上野のあたりにひっそりと店を構える「カフェー西行」で働く女給たち。そのそれぞれの暮らしを、大正〜戦後復興期の四半世紀ほどに渡る期間から切り抜いた連作短編集。厚塗りの化粧を見れば竹久夢二の絵にたとえ、生活の質はチップに左右され、銀座の高級カフェーを羨む。そういった細やかに織り込まれる当時の常識が面白い。ミステリー的な謎ではないが、人が他人のことを知ろうとする努力と喜びが各話の牽引力として絶妙だった。(ネタバレ)ラスト2話が特に良い。「お土産」が煙草のことだとは、現代の感覚からすると読めなかった。敵性語の言い換えで戦中「金鵄」と言い換えられたゴールデンバット(という煙草の銘柄)が、出征した息子との死別から母親が立ち直るきっかけになる、というのがよくできていた。

