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@roiban
SF・ミステリー・科学・文化など
  • 2026年4月28日
    暗号の子
    暗号の子
    実在の情報技術を題材に採っているだけあって、書かれた時期に幅を感じさせる(と言っても古いもので2019年初出なあたり流れの速さも感じる)。ブロックチェーンやVRを共通にテーマにした作品がいくつか。「ローパス・フィルター」はSNS上での過激な言動を除去するプラグインが流行した結果、「不可視化された」人々の一部が精神的に追い詰められた事件の真相に迫るもの。アルゴリズムへの抵抗としてマジョリティがそれを選択することはないのでは、というのは2026年をカンニングしているからこそ言える。テクノロジーへの楽観という意味で通じる「ペイル・ブルー・ドット」は、一転して著者自身後書きで述懐するように爽やかで良かった。くたびれた管理職が小学生に触発されて宇宙への憧れを取り戻すまで。小型人工衛星設計の過程でArduinoやらローカルLLMやらの語が飛び出していて、読み応えがあって良い。初出が「トランジスタ技術」誌と聞いて納得。
  • 2026年4月26日
    会話の0.2秒を言語学する
    面白かったー。0.2秒とは会話の話者交替(ターンテイキング)にかかる時間。その僅かな間に人は驚くほど複雑な処理を無意識に行なっている。文の意味理解と応答の生成は素朴に考えるような純粋に演繹的なものではなくて、確率の最大化と呼べるような推論が行われていること。言語は文だけではなく、フィラー(あのー、えーと)やジェスチャーをヒントとする「サポートありきの設計」であること。「えーと」と「あのー」の使用場面が異なっている(我々はそれを無意識に使い分けている)、というのは衝撃的だった。この本の知見を活かすとテキストコミュニケーションの「うまくいかなさ」にも光を当てられそうな気がする。
  • 2026年4月25日
    世界99 下
    世界99 下
    感想を書くだけでも緊張させられる。読み終えると確実に「アップデート」させてくれる小説だが、そんな感想に籠る「共感」のシグナルの欺瞞を鼻で笑う視点も同時にインストールされる。一貫して扱われているのは女性への加害。眼差し、制度、コミュニケーション、一挙手一投足に至るまでの暴力性が、全く手を緩めることなく暴かれる。ピョコルンが発明された未来社会はそうした問題が一度リセットされるように見えて、根底では何も解決していない。役割のスライドにより虐げる側の視点も語り手に宿らせる装置として、ピョコルンはそこで機能する。動揺させてくれるのは良い読書、ということで差し当たりこの体験を総括するしかなかった。初村田沙耶香作品だったが、他も読んでみようと思う。
  • 2026年4月21日
    世界99 上
    世界99 上
  • 2026年4月20日
    カフェーの帰り道
    良かった〜。上野のあたりにひっそりと店を構える「カフェー西行」で働く女給たち。そのそれぞれの暮らしを、大正〜戦後復興期の四半世紀ほどに渡る期間から切り抜いた連作短編集。厚塗りの化粧を見れば竹久夢二の絵にたとえ、生活の質はチップに左右され、銀座の高級カフェーを羨む。そういった細やかに織り込まれる当時の常識が面白い。ミステリー的な謎ではないが、人が他人のことを知ろうとする努力と喜びが各話の牽引力として絶妙だった。(ネタバレ)ラスト2話が特に良い。「お土産」が煙草のことだとは、現代の感覚からすると読めなかった。敵性語の言い換えで戦中「金鵄」と言い換えられたゴールデンバット(という煙草の銘柄)が、出征した息子との死別から母親が立ち直るきっかけになる、というのがよくできていた。
  • 2026年4月19日
    謎の香りはパン屋から2
    良かった。1巻で出来上がったパターンとキャラクターを引き継いでいてサクサク読める。パン屋ならではの謎が提示され、その裏側を熟知する人にしか思いつかない理由で突き詰められていく第二章「祝福のデニッシュ」が特にうまくはまっていて印象に残る(パン屋というよりはパティスリー側だけど)。誰かが隠していた事情を言い当てて踏み込んでいくという意味で基本的にお節介なのだけれど、そういう大らかな温かみも作風としてまた良い。
  • 2026年4月18日
    斜め45度の処世術
    小説のネタになりそうな話を果たしてエッセイ集として消費していいのか、といらぬ心配をしながら読んだ。七転び八起きの話は「偽物」にもあったし、ホテルアルバイトの経験は「スメラミシング」に反映されている。小説論は『言語化するための小説思考』と一貫していた。みたいな気付きをファンサービスとしても楽しんだ。しかし時折挟まれる昔話は本当に実体験なんだろうか…と『君が手にするはずだった黄金について』を読んでいると、失礼ながら疑心暗鬼になる。実はこれも小説なのではないか?という。時に不合理な自分の心の動きに対して徹頭徹尾分析的で、こうありたいな〜と素朴に憧れた。
  • 2026年4月18日
    土人形と動死体
    面白かった。『地球へのSF』で既読だが「独我地理学」がやはり素晴らしい。世界の形状が半分数学半分まやかしのような論理で突き詰められていく(「観測」を鍵とする点で割と理解しやすい)。「無名再帰書」は「魔術とはどうあるべきか」のルール作りの試みと、ダジャレのようなタイトルが劇的に噛み合う。連作短編集ということで、世界観がゆるく共有されている作品たちが徐々に繋がっていく、ように見えてあらぬ方向から物語全体が俯瞰されたあと、なんだかんだいい具合にまとまる。
  • 2026年4月9日
    正欲
    正欲
    良かった。構成が似ているメガチャーチとはどうしても比較したくなる。こちらは茫洋とした幕切れだなという印象は受けた。性に裏打ちされた正しさを徹底的に問い詰めた先で、正しさがどんどん遠のいていく(メガチャーチに似たような台詞があったな)。仕掛けと捉えるべきなのか定かでないけど、彼らの欲望する「水」に人の介在が不要なのかというのはやや疑わしくて、語り手を信頼しきれなかった。
  • 2026年4月5日
    記銘師ディンの事件録 木に殺された男
    記銘師ディンの事件録 木に殺された男
    最高。巨獣(リヴァイアサン)の上陸を防ぐ沿岸防壁が張り巡らされた世界で、記憶強化を受けた〈記銘師(エングレイヴァー)〉ディンが、木に体を突き破られ技官が変死した事件を捜査する。殺人ミステリーとしての面白さもさることながら、巨獣を中心に回る帝国の統治や生態系の作り込みが極上。感覚や肉体を強化する生体改変技術が巨獣に由来していたり、巨獣の死骸が異様な花が芽吹く危険地帯を作り上げていたりと、仄めかされるこの世界の成り立ちにはぞくぞくする。メインキャラクターはいずれも公務員で、間接的にせよ巨獣からの都市防衛に従事している。となると必然的に汚職捜査の色を帯びてきて、正義をなすこと、市民の平穏を守る責務についてかなりストレートに語りかけられる。シリーズはまだ続くようで今後が楽しみ。
  • 2026年3月29日
    友情改版
    友情改版
    良かった。『私だって青春したいですよ、本当は。』(コミック百合姫)に作中登場してキーになるため手に取った(作中では失恋を扱ったお話として「前向き」と紹介されていて、なかなか良く言い表しているなと実際読んで思った)。主人公野島は杉子への成就しない片想いの滑稽さを自覚しながらやめられない。最終的に杉子は野島の無二の親友である大宮と結ばれる、というのは冒頭からネタバレされていて、筋としてはそれだけの話だが、隠し立てのない独白や対話が重ねられ、引っ掛かるところがなかった。
  • 2026年3月28日
    ラウリ・クースクを探して
    面白かった。独立前のエストニアに生まれ、幼少からプログラミングの才能を示したラウリ・クースクの足跡を辿る物語。小川哲が本作を指して「一級の脱法小説」(予定調和を避けた小説)と評していたことから関心を持った。多分言われなければ気付かなかったが、確かに折々に典型からの「逸らし」が効いている。教会で「奥の部屋には入るなよ」と言われた次の行で入ったりするのはちょっと笑った。小気味良い驚き。全体的に組み込まれたこの傾向のお陰とも言い切れないが、バルト三国独立という歴史の一大事に接続しつつ、直接関わるのでもただ押し流されるのでもない、英雄と普通の人の中間ぐらいの半生の物語としてバランスが良く感じた。
  • 2026年3月20日
    記銘師ディンの事件録 木に殺された男
    記銘師ディンの事件録 木に殺された男
  • 2026年3月15日
  • 2026年3月15日
    星の海を駆ける
    星の海を駆ける
  • 2026年3月10日
    最後の皇帝と謎解きを
  • 2026年3月10日
  • 2026年3月10日
    百合小説コレクション wiz 2
    百合小説コレクション wiz 2
    良かった。「わたしが愛したファイナルガール」が凄い。スプラッタ映画の殺人鬼側の一人称風の冒頭部。VRゲームか何かかと予想しつつ読み進めると…。生成AIの原理、銃乱射事件、そしてタイトルにも込められた映像表現の「お約束」。いくつもの要素を絡め、更にフィクション、回想、現実を行き来しながら、重層的な語りの中に仕掛けが用意されている。「役割」への怒りと反転。言うまでもなく百合小説としても鮮やか。説明され残されたことはありつつも、それを上回るように個々の場面が強く焼き付く。/ 香道を通じた秘密の関係と香りの表現が艶やかな「庭園香」、睡眠薬依存症の吸血鬼を支える生活が息苦しい「fallin' XXXX with...」も良かった。全体的に暗くはある。
  • 2026年3月1日
    ちくま日本文学(005)
    「みそっかす」が長くてしばらく積んだ。戦前の生活史。語り手の幸田文自身は逞しく生きるのだが、親兄弟の死や家の焼失・水害が今よりずっと身近なものとしてあって悲痛(この時期の随筆全てに同じことを思うかもしれない)。小説の収録作では「笛」「黒い裾」が良かった。「黒い裾」は喪服を着る稀な機会にしか顔を合わせない親戚たちの人生が早回しで過ぎる。理不尽や悲哀をぐっと堪えるエネルギーが読み味として各作通底していたように思う。
  • 2026年2月28日
    はじめての百合スタディーズ
    はじめての百合スタディーズ
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