みーる
@Lt0616pv
2026年4月19日
暁星
湊かなえ
読み終わった
借りてきた
事件に至るまでの人間の機微を丁寧に描く展開は湊かなえの得意な手法。
宗教が絡み出すと途端に物語が重くなりがちだが、本作も違わずかなり重苦しいまま進んでいく。読み進めると何か既視感がある気がしていたが、おそらく「汝、星の如く」の2人に暁と星賀は似ているのだと思う。毒親ではなく宗教という違いはあるが、それは本質的には違わないものであるように思う。暁も星賀も「手持ちのカード」がない。宗教の恐ろしいところは判断力を鈍らせてあたかもその道しかないように思わせることだ。そんな親が子供に与える影響はとてつもなく大きい。実際、「星賀、逃げ出すの遅くないか?」とか思ってしまった。当の本人はそういう状況を客観視できなくなるのだろう。2人とも父親が亡くなっていたり病に伏していたりと母親の方が強い影響力を持っていた。不思議なことに2人の母親のどちらも幸せそうには思えない。金や地位の亡者となっていた。さらに恐ろしいのは、物語終盤で清原(清水)も偽物だと判明したことだ。暁と星賀の中では清原こそ恨むべき対象だと定め、殺人まで犯してしまった。そんな清原も誰かに操られ捨てられる運命。文部科学大臣刺殺事件は世の中に大きな影響を与えるには間違いないが、結局別の誰かが、その座に取って代わり、愛光教会は発展し続ける…結局2人はその輪廻の中のひとつに過ぎなかったのだ。
後半の「金星」でこの作品の本当のテーマは愛なのだと伝えたかったように思うが、如何せん、暁も星賀もキャラ造形が暗い。自ら進んで何かをしているようには感じられず、ぼんやりと考えぼんやりと生きているように感じた。まるでいつ死んでもいいみたいに。もちろん、宗教2世としての宿命を背負われたのだからそうなるのも当たり前なのだが、それにしても暗い。
フィクションとノンフィクションの両観点から一つの事件を深掘る展開は興味深かったが、かえってわかりづらくなっただけな気もする。「暁星」の終章も「金星」を読んだ後をおすすめするほど大したものではなかった。星賀を救おうとする暁に感情移入しずらく、テーマがぼんやりしてしまった印象を受ける。湊かなえははっきりとした落としどころは用意してくれない。その人物なりの救いで終わる。「自分ではどうすることもできないやるせなさの中にある一縷の望みや希望」を描くのが上手い。果たして2人は救われたのだろうか…
