Huddle
@huddle
2026年4月20日
抱擁
アン・マイクルズ,
黒原敏行
粉々になった石や煉瓦の埃にまみれて横たわったまま、ふたりははじめて言葉を交わした。フランは自分がまもなく故郷に帰るだろうとわかった。
「これってありうると思う?」とマーラは訊いた。「一時間が過ぎても、拳で壁を打ち抜きたいとか、人々に目を開けろと怒鳴りたいとか思わないなんてことが」
「思わない」とアランは答えた。
ふたりは薄闇のなか、並んで横たわっていた。アランは、自分たちはそれぞれ車輪つき寝台に寝て、輸血を待っているのだろうと思った。
自分のではなく、彼女の苦難、彼女の憤怒を思うと、違う気分になれた。
「でも、もしかしたら」と彼は言った。