
時間のかかる読書人
@yoko45
2026年4月22日

高校生のための 人物に学ぶ日本の思想史(1)
佐伯啓思,
公益財団法人国際高等研究所,
高橋義人
ちょっと開いた
@ 自宅
しかし日本人は西洋と違った物の見方をしているのではないか。西洋の基本的な考え方は、現実を一歩離れ、できるだけ現実を客観化し対象化してみようとする。現実を離れたところに主体を置く。
できるだけ観察者として現実を眺める態度をよしとする。これが西洋の哲学や科学の立場であった。
そういう立場を漱石はとらないのだが、日本人の思考習慣もこの西洋的な客観主義とは違っていて、例えば、西田哲学(西田幾多郎の哲学)の決定的な論点もそこにあった。
西洋哲学は、世界と、それを見る自己を分離してしまう。主体と客体を分けてしまう、それでは不十分だというのが西田哲学の出発点であった。実際には主も客も世界の中に入っている、世界の中で動きながら人間は考えたり、直観的に物事を把握したりする。これが西田哲学の出発点で、漱石も同じようなことを考えていた。傍観者・観察者として世間を見ることはできない。世間の中にあって、その具体性において世界を見ることが大事で、そこから出発する。それは科学にはならないから文学や小説になる。そういう問題があった。もっとも、付け加えておけば、漱石はだからといって科学を嫌悪していたわけではまったくなく、あるところでは自分も科学者になればよかったというようなことを述べている。