
和月
@wanotsuki
2026年4月22日
暁星
湊かなえ
読み終わった
※ネタバレを含む感想です。
物語の構成が素晴らしくて、読み終えた途端にもう一度読み直したくなる作品だった!
世間より遅れて、2026年本屋大賞ノミネート作品を全作読んでみようと思い立ち、まず手に取った1作目。初っ端から大傑作に出会ってしまった。
前半と後半で2人の主軸となる人物の半生が異なる形態で描かれていく。読み手は、前半の文章が「手記」と題されることで、書き手の赤裸々な真実が語られると思い込んで読み始める。そのバイアスを逆手に取り、継ぎ接ぎで思い描いていた人物像を、後半の「小説」で一気に塗り替えていく展開が非常に気持ちよかった。その上、更に最後の数行でひっくり返される。正直、「宗教二世」というシリアスなテーマでここまで気持ちの良い読書体験を味わえるとは想像もしていなかった。
もちろん、心地よいと言える描写ばかりではない。むしろかなり苦しく、辛い暗闇のような展開の連続だ。家族や文学といった、彼らにとって切り離せない存在にべっとりと染み付く宗教の存在が、酷く怖い。
著者である湊かなえさんのインタビュー記事によると、作中に登場する宗教は作品を執筆するにあたって一から創造したとのこと。言葉の力を教義に含む宗教とは、文学に関心がある身からすると空恐ろしい。実際に存在していたら、私自身何らかの形で知らぬ間に関わっていてもおかしくない。地獄のような実態を理解した頃には、何かを人質に取られて抜け出せない穴に引き摺り込まれる。
親族が常軌を逸した形で宗教に傾倒した時、そこに生まれる苦しみは、この作品を読んで始めて真剣に考えるようになった気がする。当事者とは比べものにならないとはいえ、報道だけでは想像できない部分があることに気付くことができた。
宗教が生む苦しみを描く一方で、人は簡単に他者を排除する生き物だという事実を描いている場面も印象に残った。暁が「ゾンビ」と称する存在、金星のクラスメイト、愛光教会とは無関係な彼等は、その実教団とさして変わらない。自分とは違う種に嫌悪感を抱き、仲間を増やし、邪魔者を排除する。結局多くの人間はどんな環境であろうと、自分以外の誰かが犠牲となる光景を見て、自分は大丈夫だと確認して安堵する。あるいは、自分が犠牲にならない為に他者を除け者にする。そうして弾かれた人々ははじめから無かったもののように扱われて、どこにも助けを求めることが出来ない。残酷で正確な描写だと感じた。
ただ、絶望一色ではないのが物語の良い点だ。暁の弟や叔父叔母夫妻、金星の担当編集、2人にとっての互いの存在、彼らは真っ暗な闇の中に光る星のように、たしかに輝いている。その一つ一つの存在が、人間も捨てたもんじゃないなと思わせてくれる。
『夜明け前が一番暗い。だが必ず日は昇る。そこには輝く星がある。』
闇をひたすらに歩き続ける日々が続いたとしても、その先でいつか出会える暁星があると信じて、人生を歩んでいこう。そう思わせてくれる、大切な一冊になった。






