
ジクロロ
@jirowcrew
2026年4月22日
二十六人の男と一人の女 ゴーリキー傑作選
ゴーリキー,
中村唯史
読んでる
自分の人生で一番かけがえのないものが、精神や身体の病であるという人間がいる。
彼らは生きているあいだ、ずっと病とともにあり、病によって生きているのだ。病に苦しみながら病によって自分を養い、病の苦しみを話すことで近しい人たちの注意をひきつけている。病によって他人から自分への共感を引き出しているのだが、その他には何も持ってはいないのだ。こうした人間は、治療して病が取り除かれると、ふしあわせになる。生きるための唯一の糧を失うからだ。空っぽになってしまうのである。自分の不健康を誇り、それによって生きるほかないような、みじめな人生というものもままあるのだ。毎日が単調でわびしいというだけで、人間がダメになってしまうことも少なくないのである。
(『二十六人と一人の女ーポエムー』)
その身体にふさわしい場所(ありか)。
それを「宿命」と呼ぶのかもしれない。
身体から何も生成しなくなれば、
自らの沈黙または罵倒により、または
それらの内面化により、より身体が汚れてしまう。
これがゴーリキーの悲しくも美しいリアリズムではないかと思えてならない。
「生きるための糧」が「唯一」であれば、それがなんであれしがみつきたくなるというのは、ある意味で人間の美徳ではないか。
