"燻る骨の香り" 2026年4月25日

星
@yoakemae618
2026年4月25日
燻る骨の香り
前2作は既読で大好きなシリーズの完結編ということで、とても待ち遠しかった。 植物の描写が手に取ったように瑞々しいこと、感覚のことさらに敏感な人たちの描かれ方が苦しげでありながらどこか軽やかなところ、暗い森の中をうす明るい光を頼りに進んでいくような感覚になるところ…このシリーズのみならず、千早先生の本を読んでいるとき独特の空気感が凝縮された一冊のように感じた。 ひとの執着というのはその人自身のみならず、周りの人な人生まで簡単に狂わせていく。その対象がものであれ、ひとであれ、記憶とかそういう実体のないものであれ、狂う。 「感覚に関しては前に言ったように、違う、としか言えない。思考は会話によってある程度は共有できるかもしれないが、感覚は共有できない。僕と丹穂さんは違う世界に生きている。彼女が自分の世界を失わないためにした選択に、僕がなにか言う権利も義務もない」 小川朔の紡いだこの言葉は、価値観は、異様にドライだろうか。わたし自身は、この言葉に、ひととの距離感の取り方を改めて考えさせられ、とても好きだと思った。このくらい線をしっかり引いた人の方が、結果的に相手を尊重しているように思う。ひとの多面性も含めて、ひとを全部知ることは到底不可能で、どんな香りだって嗅ぎ聞き視れてしまう小川朔には、そのことが痛いほどにわかっているのかもしれない。
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