ヨミスギヨミコ "殺人出産" 2026年4月24日

殺人出産
殺人出産
村田沙耶香
短編連作の形式だけど、どの話も「ありそうでない」新しい世界線で、今まで想像したことのない価値観に触れられるのがとても刺激的だった。 タイトルにもなっている「殺人出産」は、10人子どもを産めば1人殺していい、という設定の世界。 この物語の中では、殺人は「悪いこと」ではなく、新しい生命が生まれる代わりに1人の命を捧げる行為として描かれている。むしろ、生命のために行われる清い儀式のようなものとしてなんの疑いもなくあがめられている。 さらに、死んだ人も「これから生まれてくる命のために犠牲になった尊い存在」として扱われている。 明らかにおかしな価値観のはずなのに、作中ではそれが正しい世界として成立している。 このことから、殺人は確かに悪いものとされているけれど、その「悪い」という認識自体が、誰にとっても普遍的で正常なものとは限らないのではないか、と考えさせられた。 また、2作目以降も、結婚や出産、死といったものに対しても、自分たちが当たり前だと思っている価値観や社会のルールは、ただの一つの見方に過ぎず、思い込みや固定観念なのではないかと感じた。 この作品を書いた作家は、生と死や人間の存在意義といったテーマをとても身近なものとして捉えているように思った。 「正しい」と信じていることも、実はそう思わされている、一種の「刷り込み」なのではないかと、一歩引いた視点で考えさせられるのがかなり印象的。 どの話も、物語の中では世界がどんどん合理的になっていく。 今の2026年の社会はまだ本能的な部分も多く残っているけれど、時代が進むにつれて、生きること自体がより効率的で合理的になっていく流れがあるように感じる。 そうなったとき、それは本当に「生きている」と言えるのか。 人間はどこに向かっているのか。 と思った。 作中の人物たちは恋愛や結婚をしているものの、その原動力は本能的な愛情ではなく、「生きるための手段」として誰かと一緒にいるだけにも見える。 本当に誰かと生きたいから一緒にいるわけではないのだとしたら、それは果たして人間らしいと言えるのか、と考えさせられた。 もちろん、それも一つの人間の在り方ではあると思うが、そこまで人工的で自然から離れた状態を「生きる」と呼んでいいのか、という疑問も強く残る。 もともとSFや刺激的な物語が好きだけど、この作品はとても読みやすく、スルスルと読める一方で、しっかりと哲学的なテーマも感じられた。 100年後の人間の姿を想像させられるような感覚があり、とても面白かった。 感じたこと考えさせられたことありすぎて長文になってしまった笑 何を真面目に読書感想文みたいなこと書いてるんだろう笑 でもそのくらい刺激的で良い本に出会えた。
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